脳神経外科h2-icon-brain_surgery

診療科概要

概要・特色

私どもの手術方針は、予定手術であれば無剃毛、最小限の皮膚切開、小さな開頭、できればキーホール(鍵穴)での手術です。美容上も満足度高く、社会復帰までの日数は短くできます。脳動脈瘤に対してはより確実で術後血管検査を繰り返す必要がないクリッピングという直達術を原則にしています。

治療対象の主な病気

  • 脳血管障害
  • 腫瘍
  • 外傷
  • 脊椎症

受付時間

脳神経外科

9:00 〜 11:00江塚勇荒川泰明江塚勇荒川泰明江塚勇
13:30 〜 16:00亀山茂樹
(予約)

担当医師

  • 江塚 勇部長

    江塚 勇
    プロフィール

    新潟労災病院脳神経外科部長を経て、副院長として勤務定年退職と同時に上越病院脳神経外科を担当することになりました。ライフワークは脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血の治療で、重症例にも急性期に直達術(クリッピング)を行って再破裂させないという方針をとってきました。結局未破裂動脈瘤も含めて1100例以上の患者さんを治療いたしました。その経験数と成績(下のスライドをご覧ください)は全国的にみてもトップレベルです。体力を技術でカバー、美しい治療を心がけます。

    • 上越市板倉区出身
    • 新潟大卒
    資格・専門
    • 日本脳神経外科学会専門医
    • 日本脳卒中学会専門医
    • 医学博士
  • 荒川 泰明部長

    荒川 泰明
    専門領域
    • 脳神経外科全般
    • 脳卒中
    • 脳腫瘍
    • 頭部外傷
    • 顔面けいれん など
    プロフィール
    • 昭和63年高田高校卒
    • 平成6年金沢大学医学部卒、脳神経外科を専攻
    • 平成13年脳外科学会専門医取得
    • 平成17年富山市民病院にて脳外科医長
    • 平成18年上越総合病院
    資格・専門
    • 日本脳神経外科学会専門医
    • 第9回新潟医師臨床研修指導医講習会
    • 日本脳卒中学会専門医
    • 医学博士
    所属学会
    • 日本脳神経学科学会
    • 日本脳卒中学会
    • 日本脳腫瘍の外科学会
    • 日本脳神経減圧術学会
    • 日本脳神経外科コングレス

ご利用の皆様へ

多数の手術症例経験によるくも膜下出血の治療

次のような症状のどれかがあれば脳外科医にぜひ御相談ください。

  • 頭痛
  • 意識障害
  • 高次脳機能の低下(人格や認知機能の低下)
  • 全身あるいは部分的なけいれん(てんかん)
  • 半身不随やシビレ感
  • 言葉の障害
  • 顔の痛み、顔のけいれん
  • 視覚や聴覚の問題
  • 頭部受傷時
  • 受傷後しばらくして(多くは1〜2ヵ月後)認知障害や半身麻痺をきたした場合

特に、これらの症状が次第に悪くなるときは躊躇せず受診してください。

脳外科の病気にはどんなものがあるでしょうか?

半身麻痺や言語障害などの症状が突然出てまもなく回復した場合は一過性脳虚血発作です。一過性脳虚血発作は頚動脈や主幹脳動脈が高度に狭くなって発症することが多く完全閉塞の前触れともいえますので迅速な対応が必要です。一時的な意識障害もよくみられる症状ですが、てんかん発作を除けば心臓など循環系の障害によることが多いので循環器の専門医を訪ねることが必要です。てんかん発作の原因が脳腫瘍や脳血管病変の場合があり手術で完治する可能性があります。脳外科を受診する患者さんで一番多い訴えは頭痛です。頭痛、特に何年も前からある頭痛のみという人には重大な脳の病気であることはめったにありません。もちろん頭痛のみでも治療しなければなりませんが、頭痛とともに冒頭に掲げたような症状とがある場合はぜひ脳外科を受診してください。

今まで経験したことがないほどの突然の激烈な頭痛はくも膜下出血の可能性があります。くも膜下出血の場合首筋から後頭部中心の激痛でたいていは一時意識を失いますが、稀に風邪と誤診されるような軽症の場合があります(警告出血)。ほとんどのくも膜下出血は主幹脳動脈にできた脳動脈瘤の破裂によるもので、遺伝病ではありませんが3分の1くらいの患者さんで家族発生があります。血のつながった身内の方にくも膜下出血があった場合は検査を受けて脳動脈瘤の有無を確認しておいたほうがよいでしょう。脳動脈瘤があれば破裂しないように直達手術や血管内手術を計画しなければならない場合があります。

脳外科の手術はたいへん?

確かに脳外科で手術と聞いたら怖いですね、私も受ける立場になれば怖いです。だから経験豊かな良医を選ぶことが肝心です。

大部分の脳手術は脳髄(いわゆる脳みそ)を切開したり切除したりするわけではありません。脳血管病変や良性の脳腫瘍では奥に位置していても脳の表面に存在します。

うまい脳外科医は脳に傷をつけないように手術できます。一方悪性の脳腫瘍などではある程度脳髄を犠牲にしないと手が届きません。しかし幸いなことに悪性の脳腫瘍はかなり稀な病気です。

脳の病気を予防する秘訣は?

一般に脳外科では患者さんは回復がいいのですが、脳卒中で代表される脳の血管病変では発症時の病変の部位と大きさで予後が決まるといっても過言ではなく、やはり予防が大切です。

健康に関する情報があふれていますが、あれもこれも完全にすることは不可能です。ただ、ひとつだけ守っていただきたいことがあります。それは血圧を正常にしておくことです。また脳ドックを受けることも安心につながるでしょう。

診療実績

脳神経外科診療統計(2006年1〜12月)

江塚 勇、荒川 泰明

手術件数
手術件数
78
大手術 44(56%)
小手術 34(44%)
大手術の内容
脳腫瘍摘出術
11
蝶形骨内側部髄膜腫 2
トルコ鞍結節髄膜腫 2
傍矢状洞髄膜腫
大脳穹窿部髄膜腫
血管芽腫 1
海綿状血管腫 1
類皮腫(小脳橋角部巨大) 1
副神経鞘腫 1
破裂動脈瘤(くも膜下出血)クリッピング
7
重症度Ⅳ→Ⅴ 2
(独歩退院 1 / 遷延昏睡 1)
重症度Ⅳ 1
(入院中)
重症度Ⅰ〜Ⅲ 4
(独歩退院 4)
未破裂脳動脈瘤(クリッピング)
12
前交通動脈瘤 3
脳底動脈頂部 1
内頚動脈窩部 1
大型動脈瘤 1
その他 6
開頭による脳内血腫除去術
2
内頚動脈起始部狭窄 (内膜剥離術)
4
微小血管減圧術
8
顔面けいれん 4
三叉神経痛 4
小手術の内容
定位脳手術
7
高血圧性脳内出血 6
脳膿瘍 1
脳室腹腔シャント術
5
慢性硬膜下血腫洗浄除去術
14
脳室ドレナージ
1
頭蓋形成術
1
その他
6

手術の結果

手術件数は二人体制の診療科としては標準的ですが頚動脈狭窄の内膜剥離術と微小血管減圧術の割合が高く、私の40数年の脳外科医の経験からしても難しい手術が多い初年度でした。原疾患で破壊された脳の機能は完全には回復しませんので脳内血腫や重傷くも膜下出血では後遺症を残したものがあります。たとえば重症くも膜下出血例で後遺症を残していますが、私の今までの多数例の経験では重症度Ⅳで40%の方は満足できる状態になります。脳内血腫で定位脳手術を行った一人が術後再出血し再手術、しかし症状は悪化してしまいました。術後死亡と術後感染はゼロ、未破裂動脈瘤、頚動脈狭窄、顔面けいれん、三叉神経痛、重症度Ⅲより軽症なくも膜下出血ではすべて神経学的に異常のない状態で退院。脳腫瘍例で症状改善例4、神経学的異常なしが4例でした。

手術のちょっとした工夫

  1. 未破裂動脈瘤に対するクリッピング術の後できるだけくも膜形成をしています。そのため未破裂動脈瘤の術後慢性硬膜下血腫はくも膜形成のできなかった一例のみで、幸い手術せずに回復しました(手術を要する大きさではなかった)。キーホール手術ではくも膜形成術は難しいというデメリットがあります。
  2. 顔面けいれんや三叉神経痛の手術はいわゆる微小血管減圧術ですが4例は神経圧迫血管が椎骨動脈でした。この動脈は太いので微小という言葉は当てはまりません。8例中7例に責任血管を移動して減圧しています。圧迫血管と神経の間にスポンジを入れる方法では再発や神経症状を起こしやすいので移動減圧がベターです。それも遠隔部位での移動術ができればベストでしょう。

破裂脳動脈瘤によるくも膜下出血と手術成績のご紹介

典型的なくも膜下出血の診断は難しいものではありません。
自分で診断をつけて受診した患者さんもいました。
症状は今まで経験したことが無いほどの突発性の激しい後頭部の頭痛です。
急性期の診断はCTで確定します。
脳底槽が白く(高吸収域)なるので診断は容易ですが、きわめて軽度な出血(警告出血)や発症から日数の経っている場合にはCTで診断できない場合があります。
この報告は私が新潟労災病院在職中に行った脳動脈瘤手術の結果に基づくものです。
全手術例の54%、破裂脳動脈瘤の58%は私が術者、その他は私の指導のもとに多くの若手脳外科医によって手術されました。
くも膜下出血の主たる原因は脳動脈瘤の破裂によるものです。
新潟労災病院には昭和44年に脳外科が開設され、市民の脳外科に対する意識が定着している、診療圏が確定されている、などの特徴があります。
したがって脳外科の施設に入院した患者数のみでも、かなり正確な疫学的調査ができそうです。
この表は1983年から6年間の上越圏内における破裂動脈瘤によるくも膜下出血(以下単にくも膜下出血と記す)の発症頻度をみたものです。
人口10万人当たり21.5人が発症、女性に多く24.4 、男性は18.5人でした。
この時点での報告では世界で最も高い数値でした。

発病しやすい月は1,5,10月。8月は発病の少ない月といえます。

くも膜下出血の発症時間は朝と夕方に多く午後2〜3時と夜間は少ない。
排尿・排便時に多いのですが、この行為がくも膜下出血の引き金になるのか、あるいは結果であるのかは検討を要します。
くも膜下出血を年齢別、男女別にみると、男は40歳代が多く以後次第に少なくなり80歳以上の患者はほとんどいません。
女性は60歳代が最も多く、70歳代の患者も多い。
年齢別人口比率でみれば高齢者ほど発症しやすいという結果になるでしょう。
脳の下側(脳底部)には主幹脳動脈があり、動脈瘤はこれらの血管の枝分かれ部分に発生します。
このスライドは動脈瘤のできやすい主な血管を示しています。
破裂脳動脈瘤の部位を男女別にみると男の半数がACA・前大脳動脈瘤(ほとんどが前交通動脈瘤)で、IC・内頚動脈瘤は少ない。
女性では前大脳動脈瘤、内頚動脈瘤、中大脳動脈瘤(MCA)いずれもほぼ同数でした。
椎骨動脈の解離性動脈瘤は全員が男、嚢状動脈瘤は女のみでした。
全体では椎骨・脳底動脈瘤は約9%でした。
破裂脳動脈瘤によるくも膜下出血の問題点は三つあります。
特に問題となるのは生命を脅かす再破裂と後遺症に直結する脳血管れん縮という現象です。
発症後2週間以上待って手術が行われていたころの資料から待機手術の可能性を重症度別にまとめたのがこのスライドです。
重症例ほど待機できる可能性は少なくなり、重症度Ⅳでは15%、Ⅴでは30例中わずか1例のみでした。
待っている間に再破裂で死亡してしまったからです。
待機手術の時代のくも膜下出血の予後は下のグラフで表されています。
死亡35%、重度の後遺症を含めると42%が悲惨な結果だったのです。
そこで1983年4月以来、破裂動脈瘤治療の基本方針を
  1. 動脈瘤閉塞までは厳重な血圧コントロールと十分な沈静で管理し
  2. すべての症例にたいし早期(発症後72時間以内)にクリッピング術を行うこと
としました。
発症後72時間(3日)以内の直達術ではその後の血管れん縮が少ないのです。
血管れん縮はくも膜下腔に出た血液の分解産物によって引き起こされる現象です。
止血剤特にトランサミンは使わずに早期手術時に可及的にくも膜下凝血塊を除去し、脳槽から血性髄液を排液 (ドレナージ)する。
89年からは切迫ヘルニアでない場合は一晩待って翌日に手術、凝血塊はソフトになってよく取れます。
さらに1991年から強力な血管拡張剤である塩酸パパベリンの少量を脳槽ドレーンから注入して対処しています。
7年後小澤常徳氏らにより血管撮影などでこの方法の効果を確認されました。
このスライドは小澤氏から提供されたものです。
塩酸パパベリン注入後に脳動脈が拡張していることが血管撮影でも確認されます。
脳動脈瘤頚部クリッピングは瘤閉塞手段として確実な方法ですが、大きな瘤では適切なクリッピングが難しいものです。
そこで私はしばしば瘤穿刺をして減圧して頚部を明らかにした上でクリッピングを完成させるようにしています。
動脈瘤頚部から分岐している重要な血管(穿通枝など)を犠牲にしないためにもよい方法だと思います。
たとえばこれは中大脳動脈の巨大動脈瘤です。
仮のクリップで関係する動脈を遮断します。
そして瘤を穿刺し必要に応じて切除します。
このケースでは動脈瘤頚部に動脈硬化・プラークがあり(右上)、これを切除し均一な頚部壁にして確実な閉塞をしています(右下)。
2005年7月までの約23年間に行われた脳動脈瘤手術の内容です。
破裂動脈瘤726例、未破裂306例、クリップを使用した完全閉塞を心がけました。
破裂脳動脈瘤クリッピングの結果です。
緑は後遺症無く治癒した方々、黄;社会復帰可、薄紫;自立、紫;要介助、濃紫;植物症、黒;死亡と理解してください。
全体の3分の2は満足できる状態に回復、
しかし15%の方々は死亡、植物症で寝たきり状態をあわせると約5分の1は悲惨な状態で、重症例ほど結果は不良ということがわかります。
重症度Ⅳの早期クリッピング後の結果です。
約40%は社会復帰例可能でしたが26%、が死亡、22%は重度の後遺症でした。
しかし待機手術の時代では少なくとも85%の方々が死亡していました。
最重症・重症度Ⅴの早期クリッピング後の結果です。
死亡65%、重度の後遺症とあわせれば90%以上が悲惨な結果に終わりました。
わずかに2例が非常によい状態に回復、椎骨動脈系の動脈瘤破裂の症例でした。
他の部位の動脈瘤破裂と同じ重症度スケールでよいかどうかという疑問が生じてきます。
重症くも膜下出血は多くの問題を抱えています。
学会や専門誌上でわれわれの方針や工夫を発表してきました。
結論すれば最重例・Ⅴ(瀕死状態)は早期クリッピングの適応にはならない、しかし重症度Ⅳはかなり良好な結果を期待できる、早期クリッピング術の適応は重症度Ⅳまでと考えています。
例外的に重症度Ⅴでも椎骨動脈瘤であれば結果が期待できるかもしれない、重症度Ⅳでも70歳以上、内頚動脈瘤、脳内血腫形成例は予後が悪いという結果でした。
破裂脳動脈瘤の治療に関する日本を代表する大規模スタディーと比較してみました。
PCS-94は11施設の共同研究でクリッピング術、RESAT2002 は20施設共同の血管内手術の報告です。
われわれのシリーズでは死亡率がやや多いものの、予後良好例が多く優れた結果といえます。
しかし対象となった症例の背景を比較するとRESATでは70歳以上の症例、椎骨・脳底動脈瘤、重症例など治療の難しい症例の多いシリーズでした。したがって単純には比較できません。
ただし血管内手術に比べわれわれのシリーズでは再出血や再治療が少ない点で優っていたと断言できます。
重症例を除外して重症度Ⅰ〜Ⅲで結果を比較してみました。
やはりわれわれのシリーズがもっとも結果が良好でした。
しかしより厳密な比較のためには年齢や動脈瘤部位をマッチングさせる必要があることは言うまでもありません。
比較的軽症なくも膜下出血例でも術後に種々の原因で死亡することがあります。
予後不良に陥った原因を検討することがより優れた治療につながります。
重症度Ⅴの症例にも積極的に手術した前期7年間では術後死亡は多いものの、非手術例が少ないため全死亡率は24.1%
最重症例の手術を控えた後期の6年間では術後死亡は減少しましたが非手術例が増加したため、全死亡率は上昇して約29%。
破裂動脈瘤の全死亡率は26%弱でした。
高性能のMRIが普及すると未破裂の動脈瘤が発見されることが多くなり破裂前にクリッピングが行われるようになりました。
一般的に未破裂動脈瘤の手術は破裂動脈瘤より容易です。
またクリッピングしてしまえば破裂を予防でき、結局くも膜下出血で死亡といった最悪のシナリオを回避できます。
今まで1100例以上の脳動脈瘤手術に関わって体得したクリッピング術のコツを列挙してみました。
しかし手術のプロセスは言葉で言い表せない部分が多いものです。
たとえば術者の手の動きなどは優れた手術を見て学びとるしかありません。
私が中心になって行ってきた脳動脈瘤手術の平均手術時間です。
時間を競うわけではありません。
スムーズな手術は時間も短く術後の経過も良好なことが多いのです。