第44回 二つの自分h2-icon-diary

九州大学大学院の先生方が、彼らが発見した小惑星に「王貞治」という名前を申請して認められたというニュースが伝わってきました。世界のホームラン王もびっくり、といったところでしょうか。「これを機会に野球ファンが天文学に興味を持ってくれたら嬉しい」という王さんのコメントもスマートでした。

星といえば、サン=テクジュペリの「星の王子さま」の一節に、こんなことが書いてあります。大人たちは何もわかっちゃいない。本当は象を飲み込んだウワバミの絵なのに、誰に見せても帽子だとしか答えないんだから。人はなかなかその固定観念を変えることができない、自分がそうだと信じていることほど、実は真実とはまったくかけ離れていることがある、ということのたとえ話でしょうか。

このことは、自分自身にもあてはまるのではないでしょうか。

たとえば服装の好みです。自分が選ぶといつも同じような柄や色合いのものになってしまいがちです。その方が慣れていて安心ですから。でも、それは自分の可能性に目をつむっていると言えるかもしれません。いつもシックな着こなしで固めている彼女、カジュアルなものをまとったら、別人かと思うほど似合ってる。勇気を出して髪型を変えたらびっくりするほど好評で、何だか自分に自信がついてきた。そんな経験はありませんか。

わたしたちは、本当の自分を知りません。自分のふるまいが患者さんや医療チームのほかのスタッフの目にはどのように映っているか、まったく気がついていないのです。鏡に映る自分は、正面からの、少し気取った姿だけでしかありません。自分の後姿は誰にも見ることができないし、まして自分の言動が、それを受け取った人の心にどんなさざなみを作りだしたかは、全く知る由もありません。

しかしながら、周囲の人から見た自分のイメージは、そのような、自分では見ることのできない要素により多く規定されているでしょう。自分の知っている自分と人が把握している自分とは、まったく違うものなのです。

専門職としての医療者になるということは、周囲に映る自分が医療者に求められる望ましいふるまいをしているということです。おのれのイメージが周囲から見たイメージと一致していて、自然にそのようなふるまいができれば理想的だと言えるでしょう。

みなさんの研修は、そんな自分探しの毎日だと言えでしょう。では、医療のプロフェッショナルとしての姿に自分を近づけるにはどうしたらよいのでしょうか。

その方法の一つが、省察(振り返り)です。当院では一診療科のローテーションが終わるたびに、研修振り返り評価をしています。みなさんに自己目線でおのれのパフォーマンスを振り返ってもらうことはもちろんですが、看護師長さんなど他職種の指導者にも参加してもらって、外からの視点も加えた評価をしてもらっています(360度評価といいます)。

360度評価は、特に厳しめの評価をうけた場合など、みなさんにとっては心に痛いこともあるようです。その気持ちはわかります。とはいえ、意に沿わないことがあっても、ひとまず耳を貸していただくことが大切です。誰でも初めてジーンズを履いたときは、ずいぶん窮屈だと感じたのではないでしょうか。我慢して着ているうちに、それが似合う自分に変わってきたはずです。

変わることは、進歩です。さなぎは羽化するまでの間、葉っぱの裏にぶら下がって、陽射しや風雨に耐えなければなりません。でも、それを苦もなく受け入れているように見えます。その先に美しい蝶として舞う日々が待っているのですから。

お知らせです。7月23日、24日の両日、上越市内で臨床研修指導医講習会を開催します。研修医の参加も大歓迎です。興味のある方は、当院臨床研修担当 rinsho@joetsu-hp.jp までご連絡をどうぞ。

 
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