じょんのび教育回診h2-icon-diary

九月ももう半ばだというのに、まだまだ暑い。今年の夏は長いですね。とはいえ青空は高く、日暮れとともに涼風が流れ、虫の声が美しい。季節は流れているのです。

さて、一年目研修医のV太郎は、この九月から循環器内科ローテートの日々を送っている。まだ二週間しか経っていないが、AMIをはじめ、大動脈解離、拡張型心筋症、肺水腫など、てんこ盛りの症例を経験している。嬉しい悲鳴であろう。

そのV太郎に声をかけて、一緒に考える。
「さあ、この患者さんの問題点を挙げてみようか。」
「えーっと…呼吸困難でしょうかね?」

なかなか進まない。この辺の話は、前回のコラムに書いたとおりである。一年目の研修医としては、あたりまえのことである。
「何で呼吸困難だと思う?」
「サチュレーションが下がっていたし、息も荒かったです。」

悪くない。でももう少し経験して頭がこなれてくれば、頻呼吸とか起座呼吸とかいう言葉が出てくるようになるだろう。
「身体所見はどうだったっけ?」
「手足が冷たくて、心拍数が速かったです。」
「聴診は?」
「心音はよくわかりませんでした。Coarse crackleが聞こえたと思います。」
「Coarse crackleが聞こえたということは、この人の呼吸困難の原因は何だと思う?」
「心不全、でしょうか」 

そう、その調子だ。もしwheezingが聞こえたなら、心不全だけではなく気管支喘息も考えないといけないだろう。もっと耳を澄ませて、小生には聞こえていたギャロップが聞こえるようになれば、迷わず左心不全、急性肺水腫と答えられるようになるだろう。

話しながら、前回のコラムで書いたように、カルテに記載を進める。評価や治療法を記載するためには、病態を理解する必要がある。
「心臓と血管を、一つの閉じた回路だと思えばいいんだよ。肺水腫ということは、この回路の中のボリュームは多い、少ない?」
「多いと思います。」

イエス。続いて問いかける。
「末梢が冷たいということは、回路は締まっている?開いている?」
「締まっていると思います。」

そうだ。その調子。
「ボリュームが多いんだったら、どうしたらいいと思う?」

そう、ボリュームを減らせばよい。だから利尿薬を使うのだ。回路が締まっているなら広げてあげればいい。それが血管拡張薬だ。

こんな話をしながら、問題点ごとに評価、プランを書き終えると、一時間半くらいすぐに過ぎてしまう。V太郎の頭にOSをインストールする、大切な時間である。V太郎の表情に満足そうな笑みが浮かんだのを、小生は見逃さなかったのだ(!)。

そのやりとりを、一年先輩のU子が隣りで聞いていた。
「あたしも去年はこんなんだったんですよねー。」

先輩の余裕である(笑)。もっともこんなツッコミにうろたえるV太郎ではない。むしろ喜んでいるだろう。U子の言葉は、後輩に対する暖かな激励でもあるのだから。

そんなU子もまた、当院研修医の一年先輩であるW男に追いつこうと一所懸命である。ひとつ階段を登ると、見えなかった目標が見えてくる。そこに登りたくて、また努力する。

そんな感じで、彼らの毎日が過ぎてゆく。当院風教育回診の一コマでした。

 
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