ワールドカップh2-icon-diary

全国的にうっとうしい梅雨空が続いている。上越もしかり。とはいえ、それを吹き飛ばすワールドカップの熱戦ぶりである。この原稿の時点ではベスト4が出そろったところだが、さすがに伝統国ばかり。どこが栄冠をつかむのか、話題は尽きない。

それにしても、日本代表は振るわなかった。残念であるが、ここは素直に現実を受け止めるべきである。素直というのは、見たくないものを直視し、聞きたくないことに耳を傾けるということだ。そのうえで足りなかったことを分析し、反省すべき点は受け入れ、問題を改善してゆかなければ進歩はない。この評価と省察、修正のプロセスこそが鍵である。

このあたり、医療者としてのありようと共通するところがある。思えば小生、経験や過去の知識に長いことあぐらをかいていた時期があった。研修医や学生諸君とお付き合いするようになり、ようやく自分の至らなさに気が付いて、アセッている毎日である。もっと早く気がついていればと思わざるを得ない。

だからこそ、若い君たちには「素直で」いてほしいと思う。

日本代表は、チームとして成熟していないように見えた。今回のチームは、8年前のジーコ監督のチームに似ていた。どちらも特定の選手を大切にしすぎて(おそらく監督も彼らをコントロールできなかったのではないか)、チームが一つになっていなかった気がする。試合でプレーする選手は、自分のためでなく、チームのためにプレーしなければならない。ベンチの選手たちに敬意をもって、謙虚であるべきだ。ベンチの選手たちは、不満を表してはならない。歯を食いしばってサポートに徹するのも大切な役割である。

医療も同じだ。日本中の病院を探しても、どれだけの施設が患者さんのための本当のチーム医療を実践できているだろうか。チームのひとりとして、自分はその役割を全うできているだろうか。小生には、そうだと言い切れる自信がない。でも、君たち若い世代には、小生のようになってほしくはないのである。

日本代表がコートジボワールに敗れた翌日、医療者を志す地元の高校生たちが、当院に医療体験にやってきた。例年指導医について診療の現場を見学しているのだが、今年は研修医を交えて、彼らの体験談を聞いてもらったり、テーマを決めてディスカッションしたりする時間も加えた。これは思いのほか効果があり、ディスカッションは白熱し、生徒たちの感想文には例年以上に力がこもっていた。

年齢が近い分、高校生にとっては指導医よりも研修医と話した方が心安いことだろう。でも、成功の理由はそれだけではあるまい。 

彼らにとっては、医学部を卒業し、国家試験を突破し、医師としてのキャリアを歩み始めた君たち研修医の姿こそが、眩しいロールモデルなのである。そこに君たちのかけがえのない価値があるのだ。日々の研修はうまくいかないことも多く、自信をなくしたり、落ち込んだりすることもあるだろう。でも、そんなときこそ、君たちに追いつきたい、君たちのようになりたいと思っている後輩たちがいることを忘れないでほしい。

そのディスカッションの中で、「自信過剰になって、できないことをできると思ってしまうことは危険だ」という趣旨の意見があった。一理はある。だが、おそらく君たちも生徒たちも、そして指導医と呼ばれる小生たちも、できるはずのことをできないと言いわけして、力を出し惜しみしていることの方が圧倒的に多いのではないだろうか。

それではつまらない。可能性を否定せず、一所懸命でありつづけることの尊さを、ピットで躍動する選手たちが教えてくれる。だからこそ、ワールドカップが人を魅了するのである。

 
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