新潟県厚生農業協同組合連合会 上越総合病院

初期臨床研修

2014年10月06日

沖縄研修 報告書

上越総合病院 研修医1年目 野尻俊介

1.はじめに

私は岐阜大学出身であり、6年間岐阜の地で多くの指導医の先生方にお世話になりました。
その中でも特に、若くして家庭医として臨床に携っておられるK先生は、私にとって最も尊敬する医師の一人であり、ロールモデルとして追って止まない存在です。K先生は群星沖縄の沖縄協同病院で初期研修をされた群星沖縄一期生であり、いつか私も群星沖縄の研修風土を見学したいと常々思っておりました。

上越総合病院は篭島先生をはじめ、群星沖縄の空気に近い、熱い研修風土を創りあげようという思いが滲み出ており、新潟で研修病院を選べるのであれば上越総合病院で学びたいと4年生の頃から考えておりました。そして研修医として働けるようになった今年、いよいよ沖縄研修に参加できる機会に恵まれ、身震いするような興奮を抑えながら準備を進めて参りました。

私自身と沖縄の研修医の間には、知識、技能、熱意の面でどのような大きな差があるのか、そのことを思い知らされるであろう、と出発前には覚悟しており、緊張した面持ちで直江津駅を出発しました。

2.沖縄県立中部病院 様

1日目は沖縄県立中部病院様にお邪魔致しました。沖縄県立中部病院といえば全国に名を轟かす有名研修病院であり、やはり研修医からも圧倒的な自信を感じ取れました。救急の現場では2年目の先生方が1年目に対し的確な指導も行っており、「たった1年の差がとても大きな差になるんだよ。そういう研修をここでは受けているんだ。」と非常に自信を持って仰っていた2年目の岡先生の言葉は印象的でした。一方で、患者様とのコミュニケーションについては、私としては疑問符が残る場面も多くあり、忙しく動く中で自信を持てるような環境に研修病院としての魅力を感じながらも、私が目指すロールモデルとの乖離を感じずにはいられませんでした。

一日の終わりには玉城先生から沖縄県立中部病院の文化についてお話いただきました。沖縄県立中部病院は今までもこれからも沖縄の医療を支える柱であること、沖縄県立中部病院出身者は文化を共有しており、多くは沖縄県立中部病院に戻ってきているということ、等の歴史的背景をお話いただいた後に、「3次救急だけを見るような救急部は、もはや救急ではない。」といったポリシーをお話いただきました。これはトリアージに重きを置いた考えであり、1次から3次まで全てを見てはじめてトリアージができるようになる、という非常にわかりやすい、しかしながら重要な視点でした。私自身が実際にトリアージを経験できる現場はやはり当直帯であり、当直での経験数は今後の自信にも繋がるということを再認識できた1日でした。

3.浦添総合病院 様

2日目の午前中には 浦添総合病院様にお邪魔致しました。半日間の短い見学でしたが、救急部の陽気ながらも熱心なご指導を体験させていただきました。昼食での北原先生のランチョンセミナーも疾走感のあるもので、「耳学問を本やUp To Dateで確認することができるか、時間が無ければ自分にとって特定の本に記載できるか、そういうことが研修では大切になってくる」「例えば『感染症レジデントマニュアル』等に書き込んでも良い」と、非常に具体的なアドバイスをセミナーの中で頂きました。自分が読むべき多くの本を認識できました。

4.群星沖縄臨床研修センター 様

2日目の午後は 群星沖縄臨床研修センター様にお邪魔致しました。ここでは群星沖縄の歴史や思想をお話頂きました。「教育に見返りを求めない」「10年で100人の理想的指導医を創る」という組織としての考えをお聞きした際には岐阜で出会ったK先生のことを思い出さずにはいられず、自分の原点となる気持ちを思い出したような感覚を持てました。

5.大浜第一病院 様・豊見城中央病院 様・ハートライフ病院 様・沖縄協同病院 様

3日目以降は宮城先生の教育回診に付いて歩く形で、複数の病院にお邪魔致しました。

まず、3日目は大浜第一病院様にお邪魔致しました。ホテルのように綺麗な内装や、ほとんどの病室が個室である病院の構造をみて、近未来的な新しい病院の形を見たような感覚になりました。
研修医ものびのびと研修をしているように見受けられ、職場環境が及ぼす影響を目の当たりにしたようでした。午後の教育回診でも宮城先生の軽快なご説明に対し、リラックスした空気で積極的な質問がなされていたのも印象的でした。

4日目の午前中は 豊見城中央病院様にお邪魔しました。糖尿病内科を中心に見学させていただき、午後はハートライフ病院様にお邪魔しました。この日の教育回診のテーマはATL(成人T細胞白血病)であり、新潟ではあまり見ない症例を学びました。「新潟で医者をやるには必要ない知識かもしれない。しかし沖縄ではATLを知らなければ医者はできない。一方で、新潟ではツツガムシを知らなければ医者はできないでしょう。病気には地域性がある。その地域を好きになって地域を学ばなければいけません。」宮城先生のこの言葉からも、病院だけでなく地域全体に溶けこめるよう努力をすることも、研修の一環であることを再認識しました。

5日目には沖縄協同病院様にお邪魔しました。最近建てかえられたようで建物は新しくなっておりましたが、院長先生はK先生から聞いていた通り大変気さくな方で、一緒に写真も取らせていただきました。ここでの教育回診は参加者が多く、マイクをまわしながら一人ずつ発言するようなスタイルだったためか、自由発言量が少なかったように感じました。そんな中で私自身は比較的自然にプロブレムリストと鑑別診断を上げることができ、出発前に心配したような「自分と沖縄研修医の大きな差」を感じることは少なく、自信を持つことができました。

6.おわりに

今回の沖縄研修で最も意外だったことは、沖縄の研修医と自分にそれほど大きな差は今の時点では存在していない様子であった事で、このことは僅かながら現在の自分に対する自信にもつながりました。

同時に、今後の研修における姿勢を考えさせられました。今回の沖縄訪問で自信を持てた理由は、上越総合病院の研修医の先輩方が大変優秀で、この半年間、1年目の私たちに日頃からまさに屋根瓦式に知識を伝授して下さっていたおかげであり、先輩方が築いてきて下さったこの研修文化を引き継ぐには、今後半年間でもっと知識と経験を増やしていかなくてはならないと切に感じました。

今回、このように特別な研修機会を下さった上越総合病院と、他院に引けをとらない研修風土を築いて下さったこれまでの研修医の先輩方、そしてそれを見守って下さる上越地域に心から感謝し、今後の研修に励みたいと思います。有難う御座いました。

以上

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