新潟県厚生農業協同組合連合会 上越総合病院

初期臨床研修

共通臨床研修分野

共通臨床研修分野

臨床研修には、全ての診療科・分野の研修を通じて、一貫して学習するべきテーマがあります。ここではこれを共通臨床研修分野といいます。その内容は将来の進路にかかわらず医師として身に着けておくべきものであり、研修中のすべての場面において、その修得を心がけなければなりません。

たとえば「心電図を判読できる」といった具体性・個別性の高いテーマに比べて、共通臨床研修分野のテーマはより包括的で、奥行きが深く、習得に時間がかかります。知識や技能よりも態度に重点を置くものが多く含まれ、省令の定める臨床研修の行動目標と重なる点も多いです。生涯にわたって継続学習するべき課題として捉え、初期研修の間は、その基本を身につける時期だと考えることもできます。

したがって全ての診療科・分野のプログラムにその内容が記載されるべきものでありますが、それぞれ固有の学習項目があり、その都度共通臨床研修分野に関する記載を追加すると煩雑になる場合もあります。

そこで、ここでは共通臨床研修分野に関する目標、方略、評価を以下にまとめて呈示します。繰り返しになりますが、研修医は全ての研修場面で、たとえその診療科のプログラムに記載がなくても、常にこれらの修得を意識した積極的な研修を心がけなければならないし、指導医や指導者もこれらを念頭に置いた指導を行う必要があります。

共通臨床研修分野に含まれるテーマ

共通臨床研修分野に含まれるテーマとしては、次のようなものが一般的に考えられます。

#1 プロフェッショナリズム
#2 患者-医師関係
#3 チーム医療(他職種協働)
#4 問題対応能力(問題解決能力)
#5 臨床推論
#6 症例呈示
#7 医療安全(患者安全)
#8 院内感染対策
#9 医療の社会性
#10 医学教育

ここでは、これらを念頭に以下のプログラムを作成しましたが、これらがすべてを網羅しているわけではありませんし、今後医療を取り巻く情勢の変化によって求められるテーマが変わってゆく可能性があります。その場合はプログラムも改められていきます。

目標

#1. プロフェッショナリズム

一般目標GIO

医療者に相応しい行動を通じて「上越総合病院臨床研修の理念」を体現し、社会に貢献できる医師となるために、医療人としてのプロフェッショナリズムを向上させる習慣を身につける。

行動目標SBO

  1. 服装、挨拶、コミュニケーションなど社会人としての常識的な行動ができる。(態度)
  2. ヒポクラテスの誓い、新ミレニアムの医師憲章など、プロフェショナリズムに関する提言内容を説明できる。(想起)
  3. ワークショップに参加し、望ましいプロフェッショナリズムについて考察する。(問題解決)
  4. 社会契約に基づいた行動ができる。(態度)
  5. 新ミレニアムの医師憲章に基づいた行動ができる。(態度)
  6. 医療者に求められるモラル、特に保護・公平のモラルに基づいた行動ができる。(態度)
  7. 省察的実践家として、自己のふるまいを振り返り、自己変容を目指す習慣を身につける。(態度)

#2. 患者医師関係

一般目標GIO

患者を全人的に理解し、協働して診療の成果を挙げるために、患者やその家族と良好な人間関係を確立することができる。

行動目標SBO

  1. 患者、家族のニーズを身体・心理・社会的側面から把握できる。(問題解決)
  2. 医師、患者および家族が互いに納得して医療を行うためのインフォームドコンセントを行うことができる。(問題解決)
  3. 守秘義務を遵守し、プライバシーへの配慮ができる。(態度)
  4. 患者に共感的な態度で接し、思いやりの行動をとることができる。(態度)
  5. 生活環境から価値観に至るまで、患者、家族の背景を理解するよう努める。(態度)
  6. 患者や家族を人として尊敬し、対等な立場で接することができる。(態度)
  7. 自己決定権など、患者の自律性を尊重できる。(態度)

#3. チーム医療(多職種協働)

一般目標GIO

医療チームの構成員としての役割を理解し、保健・医療・福祉の幅広い職種のスタッフと協調するために、医師として求められる行動を適切に実行できる。

行動目標SBO

  1. 医療チームを構成する職種の役割を説明できる。(想起)
  2. 多職種教育プログラムに参加する。(問題解決)
  3. 他職種のスタッフと対等な関係で、共感的に接することができる。(態度)
  4. 上級医や同僚医師、他職種のスタッフ、関連機関・諸団体の担当者など、チームを構成するメンバーと円滑なコミュニケーションがとれる。(態度)
  5. 上級医や同僚医師、他職種のスタッフ、関連機関・諸団体の担当者など、チームを構成するメンバーと情報共有ができる。(問題解決)
  6. チームの状況に応じて適切なリーダーシップを発揮できる。(問題解決)

#4. 問題対応能力(問題解決能力)

一般目標GIO

患者や社会の医学的課題を解決するために、問題点を把握し、EBM(evidence based medicine)に準拠したアプローチを行い、基本的診療能力を高め、生涯にわたって問題対応能力を向上させる習慣を身につける。

行動目標SBO

  1. 問題点を把握するための情報収集ができる。(問題解決)
  2. PICO (Patient:どんな患者が Intervention:どんな介入を行う・暴露を受けるのは Comparison:どんなものと比較して Outcome:どうなるか)を用いた臨床的問題(clinical question)の定式化ができる。(問題解決)
  3. EBMの手順(収集した問題点の定式化・問題点を解決するための情報の検索・得られた情報の批判的吟味(critical thinking)、批判的吟味した情報の患者への適用・これらの過程の評価)を実践できる。(問題解決)
  4. 自己評価および第三者による評価をふまえて問題対応能力の改善ができる。(問題解決)
  5. 臨床研究や治験の意義を理解し、研究や学会活動に関心を持つ。(問題解決)
  6. 自己学習の習慣を身につけ、常に最新の知見を得る。(知識)
  7. 自己研鑽にはげみ、常にスキルの向上を目指す習慣を身につける。(技能)

#5. 臨床推論

一般目標GIO

患者の抱える問題を解決するために、病態生理に基づいた推論過程を通じて、問題志向型システム(problem-oriented system : POS)に沿って問題点を抽出し、診療計画を作成・実施して、診療録に適切に記録する習慣を身につける。

行動目標SBO

  1. 医療面接を通じて、包括的な情報収集ができる。(問題解決)
  2. バイタルサインを測定し、結果を解釈できる。(解釈)
  3. 正常・異常を区別しながら一般的な身体診察ができる。(技能)
  4. 医療面接や身体所見をもとに、患者の病態と診断仮説を呈示できる。(解釈)
  5. 患者の問題リストを作成できる。(解釈)
  6. 問題リストに沿って、初期計画(診断的計画、治療的計画、教育的計画)を作成できる。(問題解決)
  7. 問題リストに沿って、SOAP(S:患者の主観的訴え O:客観的所見 A:評価 P:計画)の形式に従った経過記録を作成できる。(問題解決)
  8. 診療録はすみやかに作成し、指導医のチェックを受け、修正を加えて推論過程の向上に努める。(態度)
  9. 退院時サマリーをすみやかに作成できる。(態度)

#6. 症例呈示

一般目標GIO

チーム医療の成果を挙げ、自己の臨床能力を向上させるために、症例をプレゼンテーションし、意見交換(ディスカション)を行う機会に積極的に参画する。

行動目標SBO

  1. 症例のプレゼンテーションができる。(技能)
  2. プレゼンテーション用の資料作成ができる。(技能)
  3. プレゼンテーションの質向上にむけた文献検索と批判的吟味ができる。(問題解決)
  4. プレゼンテーション後のディスカッションができる。(問題解決)
  5. 症例カンファレンスや学術集会などに積極的に参加する。(解釈)

#7. 医療安全(患者安全)

一般目標GIO

患者および医療従事者にとって安心・安全な医療を遂行するために、安全管理の方策を習得し、医療事故防止や危機管理に参画する。

行動目標SBO

  1. 医療を行う際の安全管理の基本的な考え方について説明できる。(想起)
  2. 医療安全講習会に参加する。(解釈)
  3. 「上越総合病院医療安全管理規程」および「新潟県厚生連医療事故防止統一ガイドライン」に沿った、医療事故防止のための行動ができる。(態度)
  4. インシデントレポートの重要性を理解し、作成が必要な状況の判断ができる。(解釈)
  5. インシデントレポートを作成できる。(問題解決)
  6. 院内救急コール(ドクターハリー、METコール)を起動し、コールに対応できる。(問題解決)
  7. 「上越総合病院医療安全管理規程」および「新潟県厚生連医療事故対応のガイドライン」に沿った、事故発生時の迅速な対応ができる。(問題解決)
  8. 医療安全上の疑義があるときはすみやかに指導医に報告できる。(問題解決)
  9. 他職種と協働して、医療安全文化の醸成に貢献する。(態度)

#8. 院内感染対策

一般目標GIO

患者および医療従事者にとって安心・安全な医療を遂行するために、院内感染対策の方策を習得し、日常診療で実践する。

行動目標SBO

  1. 院内感染対策の必要性について説明できる。(想起)
  2. 院内感染対策講習会に参加する。(解釈)
  3. 「上越総合病院院内感染対策マニュアル」に沿った、院内感染防止のための行動ができる。(態度)
  4. 標準感染防護策(standard precautions)を実践できる。(態度)
  5. 対策が必要な事象(針刺し事故や受け持ち患者の耐性菌感染など)発生時は、「上越総合病院院内感染対策マニュアル」に沿った、適切な事後対応ができる。(問題解決)
  6. 各種予防接種や抗体検査などを受ける。(態度)
  7. 院内アンチバイオグラムの内容をふまえた適切な抗菌薬の選択ができる。(問題解決)

#9. 医療の社会性

一般目標GIO

医療を通じて社会に貢献するために、関連法規・制度や医療倫理・生命倫理、地域連携、医療経済などについて理解し、社会学・社会医学的な視点から考察する習慣を身につける。

行動目標SBO

  1. 医療・保健関連法規・制度を理解し、適切に行動できる。(解釈)
  2. 医療保険、保険診療、公費負担制度を理解し、適切に行動できる。(解釈)
  3. 診断書を適切に作成できる。(問題解決)
  4. 地域における医療連携の概要と、自施設の役割を説明できる。(問題解決)
  5. 診療情報提供書を適切に作成できる。(問題解決)
  6. 社会保障費や医療経済の問題点を理解し、適切に行動できる。(解釈)
  7. 医の倫理、生命倫理について理解し、適切に行動できる。(解釈)
  8. 医薬品や医療用具などによる健康被害の発生防止について理解し、適切に行動できる。(解釈)
  9. 少子高齢化、格差社会、貧困、コミュニティー崩壊などの社会学的問題が地域医療に与える影響について考察できる。(解釈)
  10. 医療者の不足や偏在、時間外労働など、医療体制の問題点について考察できる。(態度)

#10. 医学教育

一般目標GIO

将来にわたって医療の質を支える人材を育成するために、自己啓発や後進・医療チームのスタッフに対する教育が医師の重要な役割であることを理解し、そのための活動に参画する。

行動目標SBO

  1. 研修医のための教育機会(教育回診やACLS等の各種off the job trainingなど)に積極的に参加する。(問題解決)
  2. スキルラボラトリーを積極的に利用し、スキルの修得に努める。(技能)
  3. 多職種教育プログラムや他職種との学習会に積極的に参加し、共に学ぶという立場から発言し、互いの学習を支援する。(問題解決)
  4. 医学生や後輩研修医に対してのロールモデルとしての役割を意識して範を示し、その学習を支援する。(態度)
  5. 学習者としての自己の立場を理解し、常に自己研鑽に努める。(態度)
  6. 指導医のみならず、すべての職員が指導者であることを自覚し、謙虚に耳を傾ける。(態度)
  7. 省察的実践家として自己評価を習慣づけるとともに、多職種からの360度評価を積極的に求める。(態度)

研修方略

共通臨床研修分野に固有の方略というものはなく、各診療科のスケジュール(On the job training : ON-JT)を通じて継続して学ぶものです。いわば、個々の診療科の方略すべてが共通臨床研修分野の方略だといえます。

一方で、個々のテーマに比較的親和性の高い学習機会もあります。ここではこれらを呈示します。これらはON-JTとして行われる場合もありますが、各診療科の研修を離れて別途スケジュールが企画されるOff the job training(Off-JT) であることも多いです。したがって週間スケジュールは呈示しません。なお、ここに呈示した方略が全てというわけではなく、目標達成に向けたさまざまな方法を他にも用いることが望ましいです。

#1. プロフェッショナリズム

  1. 日々の指導医との振り返り
  2. 上越総合病院主催のワークショップ
  3. SEA(significant event analysis)
  4. ポートフォリオの作成
  5. 文献や成書、ドキュメンタリーなどの読書

#2. 患者医師関係

  1. 患者に対する病状説明(指導医とともに同席する)
  2. 医療面接
  3. 文献や成書、ドキュメンタリーなどの読書
  4. プロフェッショナリズムに関するワークショップ
  5. SEA(significant event analysis)
  6. ポートフォリオの作成

#3. チーム医療(多職種協働)

  1. 多職種カンファレンスへの参加
  2. 退院前カンファレンスへの参加
  3. 多職種教育プログラムへの参加
  4. 他職種からのレクチャー
  5. 他職種の業務体験

#4. 問題対応能力(問題解決能力)

  1. 学会発表
  2. 症例検討会への発表(院内検討会や上越医師会の症例検討会など)
  3. 抄読会
  4. シミュレーターによるトレーニング
  5. 各種研修会(院内研修会や医師会主催の生涯教育講演会など)

#5. 臨床推論

  1. 外来診療(特に新患)
  2. 入院患者の診療
  3. 退院時サマリーの作成
  4. 症例検討会への発表(院内検討会や上越医師会の症例検討会など)
  5. 抄読会
  6. 指導医による診療録点検
  7. 各種研修会(院内研修会や医師会主催の生涯教育講演会など)

#6. 症例呈示

  1. カンファレンス
  2. 症例検討会への発表(院内検討会や上越医師会の症例検討会など)
  3. 学会発表
  4. 学会での演題聴講
  5. 抄読会
  6. 各種研修会(院内研修会や医師会主催の生涯教育講演会など)

#7. 医療安全(患者安全)

  1. 病院開催の医療安全講習会
  2. 医療安全チームへの参画
  3. インシデントレポートの作成
  4. 処方疑義照会(個々の薬剤の安全な処方を薬剤部から学ぶことができる)
  5. Morbidity and Mortality conference(合併症および死亡症例検討会:M&Mカンファレンス)などの症例検討会

#8. 院内感染対策

  1. 病院開催の手洗い講習会
  2. 病院開催の感染対策講習会
  3. 感染対策チームへの参画
  4. 病院職員の予防接種への参画

#9. 医療の社会性

  1. 医事課によるレクチャー
  2. 診断書作成
  3. 地域連携室によるレクチャー
  4. 診療情報提供書の作成
  5. 新聞や書籍の読書
  6. 保健所研修
  7. 地域医療に関する研修会(医師会や自治体が開催するものなど)

#10. 医学教育

  1. 研修医勉強会
  2. 抄読会
  3. シミュレーターによるトレーニング
  4. BLS、ACLS、PALS、JPTEC、院内外傷コースなどの各種off the job training
  5. 医学生に対する屋根瓦方式の指導
  6. SEA(significant event analysis)
  7. ポートフォリオの作成
  8. 多職種カンファレンス
  9. 多職種教育(interprofessional education:IPE)

評価

研修中の評価(形成的評価)

共通臨床研修分野で行われる評価は、その性質上ほとんどが形成的評価です。以下に示したような評価と適切なフィードバックを繰り返して受けながら、研修医は達成度の十分でない領域の研修を深め、成長してゆくことが期待されます。

評価の時期 主として個々の診療科・部門のローテーション研修修了時
評価者 指導医、指導者、プログラム責任者
方法 各診療科のプログラムに委ねるが、大部分が観察記録となるであろう。
評価ツール
  • EPOC
  • 「上越総合病院臨床研修規程」に定める評価表(研修振り返り記録、研修医に対する評価表(指導医、コメディカル、プログラム責任者)
  • その他各診療科で定めるもの

研修後の評価

総括的評価

2年間の初期研修修了時に、臨床研修管理委員会が総括的評価を行います。その内容は研修修了の可否という形で示されます。

指導体制についての評価

すべての診療科・部門の研修において、研修医は以下の評価を行います。

  • 評価表による指導医・上級医の評価。
  • 評価表による診療科の研修状況(経験できた症例数、研修期間の適切さなど)の評価。

すべての診療科・部門の研修において、指導者(病棟師長)は評価表による指導医・上級医の評価を行います。

指導体制

各診療科・部門の指導体制に委ねます。必要に応じて、プログラム責任者の判断のもとで臨床研修管理委員会が関与します。

各診療科研修プログラム

各科の研修プログラム詳細は、下記からダウンロードできます。

  1. 呼吸器内科
  2. 消化器内科
  3. 腎糖尿病内科
  4. 神経内科
  5. 循環器内科
  6. 総合診療科
  7. 小児科
  8. 産婦人科
  9. 外科
  10. 脳神経外科
  11. 呼吸器外科
  12. 整形外科
  13. 眼科
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