新潟県厚生農業協同組合連合会 上越総合病院

病院長挨拶

病院長挨拶(2023年1月)

病院長 篭島 充

 あけましておめでとうございます。日頃は上越総合病院にあたたかいご理解・ご支援を賜り、まことにありがとうございます。

 残念ながら、昨年もまたコロナ禍の一年でした。オミクロン株の脅威で、夏の第7波、年末の第8波ともども、発熱外来には大変多くの方が受診し、当初の確保病床数を越える数の入院を受け入れました。少なくない職員が感染したり、濃厚接触者になったりしたため、予定入院を延期していただく事態となった日もございました。多大なご心配、ご迷惑をおかけいたしましたことに、あらためておわびを申し上げます。

 さて、昨年12月の新潟日報に、看護師不足の記事がありました。一例として、今年開院予定の県央基幹病院で、必要数に比べて、採用予定者が百名ほど不足していることが取り上げられていました。

 その後の記事では、県は必要数が確保できる見通しを表明していますが、県央地区に限ったことではなく、都市部を除いて、全国で同じようなことが起こっています。上越においても、どの病院も看護師確保に頭を悩ませています。夜勤や交代勤務など、もともと激務であることに加えて、医療が高度化して、求められる看護のレベルが高くなっていること、患者さんの多くがご高齢で、日常生活の多くの場面でケアが必要なため、それに拍車がかかっていること、業務内容に見合った十分な待遇が保障されていないことなどが一因かと思われます。

 加えて、医師の場合と同様に、都市部の大規模施設で働きたいという希望を持つ方が増えています。県立看護大学をはじめ、上越の看護師養成機関の卒業生のうち、県内に残る方は半数にも届きません。県内出身でありながら、県外に出てゆく方が少なくないのです。

 薬剤師の不足も大きな問題です。市中のドラッグストアで働く方が増え、病院薬剤師が確保しにくくなっています。病院薬剤師の業務は専門性が高くて複雑であることや、待遇の差が影響しているのかもしれません。

 看護師や薬剤師のみならず、もちろん医師も、そのほかすべての職種で、都市部への人材流出がここ数年加速しています。患者さんが多く、医療水準の高いところで経験を積みたいと考える人たちが増えているのかもしれません。また、医療に限らないことかもしれませんが、消費者が多く、利益の挙がるところに人も物もお金も集まるような社会構造が背景にあるような気もします。

 もちろん、少子化で働き手である若者の人口が減っていることは、根本的な問題です。そんな中、病院勤務の医師については、来年からの働き方改革で、時間外労働が制限されます。夜間や休日に病院で仕事ができる時間が短くなってしまうので、これらの一方で、高齢者人口に大きな変化はありません。つまり、医療のニーズは多いのに、働き手がいないという状況にどんどん向かってゆきます。

 このような背景の中で、上越地域の医療を守ってゆくのは、並大抵のことではありません。近くに医療機関があり、いつでも何でも対応してもらえるなら、それが一番いいでしょう。ずっと今と変わらず病院があって、同じように診療が受けられれば、それに越したことはないでしょう。でも、どうやらそれは難しいのです。今後は医療機関の再編が避けられないでしょう。この点は前回までのこの項で詳しくお伝えしましたので、そちらもご一読ください。いずれにせよみなさまには、そのような現状であることをぜひご理解いただきたく存じます。

 較差の拡大と社会の分断、ウクライナの戦禍、円安と物価高、日本の国力の低下など、わたしたちはますます難しい問題に直面しています。社会の変化のスピードがどんどん速まり、追い立てられるような思いをしながら、見通しのつきにくい、落ち着かない気持ちで日々過ごしているような気がします。

 とはいえ、時代は待ってくれません。これから今後のこの地域の医療をどう維持するか、病院再編も視野に入れた話し合いが進むはずです。上越総合病院としては、地域のみなさんに受け入れられ、持続可能な医療体制を築くために、関係者と協力しながら、前向きに関わってゆく所存です。何卒ご理解を賜りますよう、お願いを申し上げます。

花となり雫となるや今朝の雪

加賀千代女

 幼い頃、大雪の大晦日。父と一緒に五右衛門風呂に入りました。お湯が熱かったので、父は窓を開け、洗面器で外の雪を掬って、湯舟に投げ込んでくれました。年が明け、家族総出で雪下ろし(雪堀りと呼んでいました)をしました。大雪は止み、ひらひらと舞うばかり。風呂場の軒から伸びたつららの先に、水滴がきらきら光っていました。寒かったけど、心はあたたかでした。

 そんなゆったりとした時間は、今や望むべくもありません。でも、大切なものは変わらないと思います。医療はまさに激動の時代を迎えていますが、ひとりひとりの物語を大切にしながら、荒波を乗り越えてゆけるように、職員一丸となって邁進してゆく所存です。本年も、上越総合病院を何卒よろしくお願い申し上げます。

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