病院長挨拶(2018年1月)
病院長 篭島 充
年初にあたり、謹んで新春のお慶びを申し上げます。
さて、今年の干支は戊戌(つちのえいぬ)です。調べてみますと、「戊」の語源は茂るという字で、「戌」という字には刈り取るとか滅びるといった意味があるそうです。これらが重なった戊戌は、生い茂った草木が枯れる、あるいは刈り取られるということから、「変化」を表すると言われています。
医療の部門では、戊戌の年を待たずに、すでに大きな変化が進んでいます。急激に進む高齢化や高騰し続ける医療費を背景に、限りある資源の適正な配分を目指して国が進めている、地域医療構想や地域包括ケアと呼ばれるものがそれです。ここには、いつまでも医療に頼らず、施設や在宅でのケアも含めて、そのときの状態に応じたサービスを、それに適した場所で受けられるように、医療、介護、福祉を一体とした体制を作りましょう、という考え方が示されています。
これに従えば、次のようなことが起こります。我が国のベッドの多くは急病の治療を目的とする急性期病床ですが、人口減少とともにその需要は減ってゆくはず。一方、患者さんの高齢化で、急性期後にリハビリなどで入院を続けるための回復期病床は足りません。これらをふまえて、単価が高い急性期病床を回復期病床に変え、全体の病床数を減らしましょう。高齢になればいつもどこか調子が悪いのはあたりまえ。急に悪化したときは病院で治療を受けますが、治療が済んだら早く退院して地域に戻りましょう。介護が必要なら施設や在宅ケアを使いましょう。ボランティアと一緒に生活支援や介護予防をしましょう。
つまり、これからは病院で医療を受けるだけではなく、地域全体を療養の場としてゆくのです、そのために地域全体で知恵を出して力を合わせて下さい、ということです。実現するのはなかなか大変そうですが、他にはよい方法がないのかもしれません。戊戌の今春に予定されている医療・福祉の診療報酬ダブル改訂は、この方向性を決定づける象徴だと言ってもよいのではないでしょうか。
この変化の中で上越総合病院に求められる役割は、地域の急性期医療の担い手となることだと考えます。その任を果たすために、私たちは業務改善や体制作りに取り組みます。診療機能を一層充実させ、チーム医療のレベルを高めます。個々の職員のレベルアップをはかり、医療のプロフェッショナルに相応しい行動を実践します。これまでもこのような努力をしてきましたが、今年はすべてを一段レベルの高いところに引き上げてゆきます。
一方で、みなさまにお願いもございます。地域医療構想では、状態に応じて療養先が変わってゆきます。そのため急病で私どもの病院に入院しても、病状が落ち着いたところで回復期や慢性期病床を有する他の施設に転院していただく場合もございます。外来の患者様も、病状が落ち着いている場合はかかりつけ医への通院をお願いする場合があるかもしれません。ご理解をいただきたく存じます。
このような変化に対応しながらも、上越総合病院が伝統として持ち続けてきた大切な理念-人に優しい良質な医療を提供すること、医療を通じて上越地域の発展に貢献すること-については、ひとときも忘れることなく、大切な文化として守り抜く所存でございます。
変化の年の先にあるものは、私どもの病院の進歩と成長、そして安心して暮らせる健やかな上越地域であると信じております。今年も上越総合病院にご支援、ご指導を賜りますよう、何卒よろしくお願いを申し上げます。