新潟県厚生農業協同組合連合会 上越総合病院

病院長挨拶

病院長挨拶(2024年8月)

病院長 篭島 充

 この夏も猛暑の日々ですが、お変わりございませんでしょうか。平素は上越総合病院に多くのご理解、ご支援をいただき、ありがとうございます。

 さて、本日は何よりもまず、おわびをしなければなりません。新聞報道などでご存知のように、当院の経営母体である新潟県厚生連の経営が、大変厳しい状況となってしまいました。当院も大きな赤字を計上しております。みなさまに多大なご心配をおかけすることとなり、大変申しわけございません。

 職員はみな一所懸命に日々の業務に取り組んでいますが、新潟労災病院の診療機能低下などがあり、当院は診療機能を拡充せざるを得ず、そのために支出が増加しました。一方、コロナ禍で減少した患者数が思うように回復せず、収入は期待ほど増えておりません。そこに物価高、とくに電気代の高騰も加わって、このような事態に至ったものです。

 状況を改善させるべく、今年度の診療報酬改訂の内容に沿って、さらなる収入増加策を講じるとともに、役員報酬減額などの支出抑制を進めております。成果が挙がるように職員一同、厚生連一同で邁進してまいりますので、どうかご懸念なく当院をご利用いただきますようお願い申し上げます。

 続いて最近の当院の話題についてご紹介申し上げます。

 新潟労災病院の透析がこの4月から当院に集約されました。これまでの透析室では手狭なため、新潟県と上越市のご支援のもと、新たな透析棟を建設し、機材を増やし、新潟労災病院透析室のスタッフをお迎えしました。おかげさまで順調に透析が行われており、安堵をしているところです。

 昨年夏に、従来の地域連携室を拡充して、患者サポートセンターをオープンしました。正面玄関脇に個室を含む相談用のスペースを新たに設け、スタッフも増やして、周辺の病院やクリニック、施設などとの連携を今まで以上に積極的に進めています。このことが、地域医療構想のコンセプトである医療機関の役割分担と連携につながります。また、予定の入院患者様には、従来入院当日に実施していた書類の作成や持参薬の確認、各種手続きなどを入院に先だってここで行っていただくようにいたしました。その結果入院してすぐに必要な処置を受けていただくことができるようになり、好評を博しています。

 この春から医師の働き方改革が導入されました。今のところ問題となるような長時間の時間外労働は回避できております。みなさまのご理解、ご協力のおかげです。この場を借りて、お礼を申し上げます。

 次に、これからの話題です。

 次年度の新潟労災病院の閉院後は、整形外科を中心とした手術の患者様や救急の患者様の相当の部分を、当院で受け入れることになります。実際に、これらの患者様がすでに増え始めています。今後救急外来や病室が混雑するかもしれません。とくに病室を現状よりも増やすことはありませんので、入院期間を短くして、手術が終わったり、病状が小康をえたりしたところで、それ以降の治療やリハビリを担当する他の施設に転院していただくことがさらに増えます。これがまさに、医療機関の役割分担と連携なのですが、限られた病床の有効利用にむけて、ご理解、ご協力を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

 冒頭で新潟県厚生連の経営危機についてお伝えしましたが、県立病院も事情は同じです。報道によれば、一般会計から200億円近い補填をしてもなお、今年度は40億円を超える赤字が見込まれるそうです。

 みなさん、このような現実をどう思われるでしょう。わたしは、今の仕組みのままではこの地域の医療を維持してゆけないと思っています。厚生連も県も、市も、単独で病院を運営してゆく力はもはやありません。これからは経営母体を越えて一致団結し、この地域に安心な医療を残してゆくための、一新された仕組みを作らなければなりません。キーワードは、機能の集約、分担、連携です。そこには当然病院の再編や病床数の適性化なども含まれるでしょう。同時に、この地域で行われていない新しい治療ができるようになる、上越の外に出て治療を受けることが少なくなるといった、みなさんの期待が膨らむ要素も含まれることでしょう。

 それこそが地域医療構想です。現在話し合いが進められており、近々地域医療調整会議で将来像が示されると思います。当院は医療者としてこの地域を守ってゆくために、積極的に発言するとともに決められたことには真摯に向き合って、対応してゆきたいと考えております。

朝顔にわれ恙(つつが)なきあした哉

正岡子規

 この時期の花といえば、朝顔。小学校に入学した年、みなで朝顔の種を植木鉢に撒きました。友人の鉢は蔓がどんどん伸びてゆくのに、自分のそれは元気がなくて、気の毒に思った担任の先生が声をかけてくれた。そんなことがありました。母方の祖母の臨終に遭い、医者になろうと決めた日に、軒先に咲いていたのも朝顔でした。医者になって上越に戻ってきたとき、育てた花も朝顔でした。

 みなさまの心の中にも、それぞれの朝顔、それぞれの思い出があることでしょう。上越総合病院は、そんな一人一人の物語に思いを馳せながら、皆さまが住まうこの地域を守るための医療を続けてゆきたいと願っています。今後とも何卒よろしくお願いを申し上げます。

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