新潟県厚生農業協同組合連合会 上越総合病院

病院長挨拶

病院長挨拶(2021年8月)

病院長 篭島 充

 平素は上越総合病院に多大なご理解、ご支援を賜り、まことにありがとうございます。

 コロナ禍での2回目の夏ですが、みなさま大変なご苦労をなさっておられることと存じます。心よりお見舞いを申し上げます。

 当院も新型コロナウイルス感染症重点医療機関として、PCR検査や感染した方の受け入れ、ワクチン接種などの対応をして参りました。一日も早い収束に向けて、引き続き職員一同、努めてまいります。

 さて、コロナ以外にも、今後の地域医療には大きな課題があります。医師の働き方改革と、地域医療構想です。以前よりこの稿でも取り上げてきましたが、今回は医師の働き方改革についてお伝えします。

 いわゆる過労死の基準として、一年間の時間外労働時間が960時間を越えることが挙げられています。国の調査によると、全国の病院勤務医の4割程度が、夜間や休日の呼び出しや救急対応などで、この基準を越えて時間外労働をしています。このような状況を改めるために、国が法律を改正して、国策として推進しているのが、医師の働き方改革です。2024年からの完全実施に向けて、全国の病院で準備が進められています。

 当院でも多くの医師が長時間の時間外労働をしています。急病の患者さんが運ばれれば、診療時間外であっても、病院は対応せざるを得ません。ですから、何もしなければ、医師の時間外労働時間は増えてゆく一方です。

 しかしながら、国の方向性に沿って、これからは一人一人の医師の時間外労働時間を短くしなければなりません。これまでは夜間に働いても、大部分の医師がそのまま翌日も仕事をしていましたが、今後は勤務と勤務の間に9時間休むことや、連続勤務時間を28時間までにすることが求められます。やむを得ずこれが守れない場合は、診療時間内に代わりの休息時間を与えなければなりません。

 そのために、病院は診療の仕方を大きく変えざるを得なくなります。通常の業務については診療時間内に終える必要が生じますので、たとえばこれまで午後から行われていた予定手術を、朝から始めることが増えるでしょう。そのため、午前中に行っている外来診療を縮小せざるを得なくなります。外来通院中の患者さまに対して、ふだんは自宅近くにかかりつけの先生を見つけて通院していただき、当院には半年に一回程度の定期チェックとか、病状が変化したときなどに受診していただくようお願いすることが多くなるでしょう。

 これまでは一人の主治医が患者さんの対応をしてきましたが、今後は複数の医師がチームで主治医となり、交代で診察をするようになるでしょう。入院中の患者さんが時間外に病状変化を来した場合、主治医ではなく、当直医がまず対応する場面も出てくるでしょう。

 また、これまで夜間や休日にも行っていた入院患者さまの病状説明を、原則として平日日中の勤務時間内にお願いすることになります。さらに、これまで医師がしていた業務の一部を、他の職種の職員が行う場面が増えるでしょう。一例として、放射線技師や検査技師でも採血や点滴ができるように、法改正が進んでいます。

 このような変化が、来年度から当院でも少しずつ現実のものとなります。戸惑いをお感じになる場面もあるかと存じますが、何卒ご理解を賜りますよう、お願い申し上げます。

 あわせて、休日夜間の上手な病院受診にご協力をいただきたく存じます。統計によれば、時間外に救急で受診した患者さんの多くは、緊急性の乏しい、翌朝まで待つことのできた状態であることがわかっています。上越地域でも、事情は同じです。受診前にまず電話で相談していただく、あるいは救急安心センターダイヤルに電話をして(#7119)、すぐに受診する必要があるか相談するといったことをご考慮いただければ、大変助かります。

 自分の家のすぐ近くに病院があり、専門医が揃っていて、いつでも診てもらえるなら、それが一番いいでしょう。一方で、若い人の人口が減り、医療の現場で働く人が減ってゆく中では、それが難しいこともまた事実です。そんな中で、将来ある医療者の健康や生活も守ってゆかなければなりません。

 限られた人員で、限られた時間の中で、どうやって地域の医療を守ってゆくのか。そのことを、みんなで考えなくてはなりません。そういう時代がやってきたのです。

音もなし 松の梢の遠花火

(正岡子規)

 中学生の頃、臨終間際の床から祖母を抱き上げ、海から昇る花火を、窓越しに一緒に見たことがあります。脳梗塞で話すことのできない祖母でしたが、花火の灯りに頬を照らされ、にっこり笑っていたのが思い出されます。

 今年もみなさまそれぞれの、夏の思い出があることでしょう。コロナ禍であっても、医療の未来が厳しいものであっても、上越というところが、そんな日常を大切にする場所であってほしいと思います。それには困ったときに安心して受診できる医療を守ってゆかなければなりません。何卒ご理解、ご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。

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