新潟県厚生農業協同組合連合会 上越総合病院

病院長挨拶

病院長挨拶(2025年8月)

病院長 篭島 充

 日頃は上越総合病院に多くのご理解、ご支援をいただき、まことにありがとうございます。

 例年以上の猛暑で、みなさま難儀をしておられることと思います。水分補給や冷房を抜かりなく行って、くれぐれもご自愛いただきたいと存じます。

 さて、当院をはじめとする新潟県厚生連病院の経営状況について、ご心配をおかけしております。ここで今一度、現状を整理してお伝えいたします。

 病院関連6団体が行った調査では、昨年度の診療報酬改訂後、全国の病院で経営が悪化し、6割強が赤字です。次のようなことが理由として語られています。

 コロナ以後、医療機関を受診する患者さんが減っていること。患者さんの受診に対する意識が変わったのかもしれませんし、人口減少で患者さんそのものが減っているのかもしれません。

 次に、円安などの影響による物価高で、支出が大きく増えていることです。診療に必要な医療材料などの購入に消費税がかかるのは病院も同じであり、かなり高額の出費です。

 そして何よりも、診療報酬が低く抑えられていることです。病院の収入は実質的に国による公定価格で、それを決めているのが診療報酬です。国の財政状況がひっ迫しており、その改善のために、支出の主要な部分を占める社会保障費、中でも医療費を抑えたいという方針が背景にあります。社会保障を維持するため現役世代の税負担を軽くしたいという意図もあるでしょう。

 そのようなわけで、県内の病院も大部分が赤字です。新潟県厚生連は、昨年度一時60億円を越える赤字の見込みとなり、資金が枯渇することが懸念されました。これを回避するため、ボーナス減額などの痛みを伴う改革を行い、最終的に30億円強の赤字にまで圧縮させることができました。当院は当初9憶円を越える赤字の見込みでしたが、最終的に5億前後まで減額できました。

 とはいえ、まだまだ巨額の赤字であり、安心はできません。幸い国の補正予算措置を受けて、新潟県厚生連は県や病院が立地する自治体から19億円の財政支援を受けることができました。ご支援をいただいた県や自治体のみなさまには、この場を借りてお礼を申し上げます。引き続き黒字化に向けた努力を続けてまいります。

 ちなみに県立病院の昨年度の赤字額は、過去最大の46億円でした。県立病院は一般会計から年間146億円の繰入金が投入されており、そのうえでのこの数字ですので、繰入金が投入されていない厚生連病院よりも、さらに厳しい状況かと思われます。

 いずれにせよ、今までと同じやり方で病院を守ってゆくことは、相当に難しい時代になりました。学校が統廃合するように、あるいは市町村が合併するように、大きな発想で地域の医療の未来像を考えなければならないときが来たと言うべきでしょう。

 そのような未来像を考えてゆくプロセスを地域医療構想といいます。

 新潟労災病院の閉院、ならびに閉院後の対応もその一部です。この件についてはこれまでに話し合いが済んでいます。当院はすでに透析の患者さまの受け入れを終えていますが、さらに手術が必要な患者さんや救急の患者さんの受け入れをするべく、鋭意準備を進めているところです。ご安心ください。

 なお、当院は紹介患者重点医療機関に任じられているおり、新患を中心に診療する役割が求められています。そのため労災病院から当院をご紹介いただいても、病状が比較的落ち着いている経過観察中の患者さまについては、ご自宅近くのかかりつけ医への通院をお勧めする場合がございますので、ご理解、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

 考えなければならないのは、さらにその先のことです。以前からこの項で申し上げていますが、わたくしの意見としては、これまでの病院の建物を使うにせよ、病院の数も、名前も、役割も、経営母体も、大きく変わるのではないかと思います。それぞれの病院が役割を分担し、それに応じて連携を強化し、職員も互いに行き来して手伝いながら、地域全体が一つの病院であるかのような医療に向かってゆくものと予想をしています。県によれば、今年度中に将来像を示す方向で、病院開設者間での話し合いが進められています。その結果を待ちたいと思います。

 さて、ここからが大切なところです。今後の話し合いがどのように進むにせよ、わたくしども上越総合病院は、「医療を通じて上越地域の発展に貢献します」という理念を離れることはありません。地域のみなさんと向き合い、地域の課題を受け止め、みなさんと一緒にその解決に向けて取り組んでゆく。この姿勢を守り続けます。ですからどうか安心して当院をご利用ください。

盆用意いつしか二人になりにけり

山田正子

 自分のことのように、この句をご覧になっている方も少なくないことでしょう。小さい頃、お盆は家を出て行った親戚が集まってくる、特別な、待ち遠しい時間でした。親戚を迎えるために、忙しく支度にいそしんだものです。時は流れ、家族の形も変わり、お盆も昔とおもむきが変わったかもしれません。しかしながら、故郷を思う気持ち、故人をしのぶ気持ち、若い人の未来を願う気持ちは変わらないと思います。そんな願いを大切にする地域であってほしいですし、医療はそのためにお役に立てるものでありたいと思います。

 上越総合病院は、これからも安心して暮らせる地域づくりのために力を尽くします。ひき続きご理解、ご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願いを申し上げます。

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