病院長挨拶
病院長挨拶(2019年1月)
病院長 篭島 充
年初にあたり、謹んで新春のお慶びを申し上げます。日頃は上越総合病院に多くのご理解とご協力を賜り、ありがとうございます。
昨年は歴史的猛暑が稲の実りに影を落とす一方、豪雨が各地を襲い、災害が日常化したような感がありました。暖冬の予想は雪国に住まう身にはありがたいことですが、これも温暖化の一面かと思うと、落ち着かない気もいたします。穏やかで、幸多き年となることを祈りたいものです。
昨今は医療の世界も変化が速く、目が回るようです。地域包括ケアの名のもとに、医療・介護・すまいを一体化させた新たな地域づくりが国策として進められています。現場の実感としては、病床数削減と医療費抑制が強引に推し進められている印象を拭えません。このことと関連して、昨年診療報酬と介護報酬の同時改訂が行われましたが、その影響は大きく、当院のような急性期病院にも、在院日数短縮、病床利用の効率化などが求められ、経営は容易でありません。
とはいえ、立ち止まっているわけにはゆきません。地域の健康のよりどころとして、最新かつ安全で、皆様に満足していただける急性期医療を提供してゆくために、今年も職員一同努力をしてまいります。
一例を挙げます。昨年度から院内の部門ごとに業務改善計画を立案し、その達成に向けた実践を促すため、バランスド・スコアカードという診療の質改善プログラムに取り組みはじめました。今年はさらにこれを推し進めて、部門個別の取り組みだけではなく、病院全体としても、さらなる業務改善を図るように努めてまいります。また、回復期医療機関や開業の先生方、保健福祉施設、行政、JAなどとのさらなる連携を図り、地域のネットワーク造りに貢献をしてまいります。
また、来年は上越消防本部がリージョンプラザ隣に移転し、当院と直結する道路が拓かれます。そのため救急医療や災害医療への一層の貢献が求められるでしょう。これらは当院がもともと力を入れている分野ではありますが、さらにご期待に応えることができるよう、体制の強化をしてまいります。
くわえて、高齢化時代の新しい問題にも取り組んでゆきます。たとえば、人生の最終段階に達したとき、自分はどこでどんな医療や介護を受けたいかといった問題について、判断能力があるうちに個々の希望を周囲に伝えておくプロセス(アドバンスケアプランニング:ACP)について、関連団体と協力して、地域全体で検討するための環境作りを始めたところです。
それから、労働者人口が減ってゆく中での喫緊の課題として、次世代の人たちが一人でも多く医療や介護を選んでくれるよう、病院をあげて取り組んでいます。具体的には、研修医や医学生、看護学生、薬剤部学生などの研修や実習を積極的に受け入れ、彼らの学びに協力しながら、職員の活躍を見てもらっています。全員が先輩として若い人の手本を示し、医療を選んでもらおうというわけです。
今年の干支は己亥(つちのとい)です。「己」の文字には草木が生い茂り、次なる実りにむけて形が整うという意味があるそうです。一方亥という字は、葉や花が散り、種の内側に次の成長を願って命をこめる過程を現しています。そのためこの干支は、充実と準備の時期といった意味で捉えられるようです。
わたしたちの目指す医療はもとより一朝一夕に実現できるわけではありません。花開くときもあれば、力を蓄えるときもあります。日々の業務を誠実に務め、いつでも皆様のご期待に応えることができるよう準備を怠るなという戒めとともに、職員一同、己亥の一年を過ごして参る所存でございます。
上越総合病院は地域の皆様に支えられ、皆様とともに考え、望ましい医療を作り上げてゆく病院です。本年もご指導、ご鞭撻を賜りますよう、何卒宜しくお願いを申し上げます。