新潟県厚生農業協同組合連合会 上越総合病院

病院長挨拶

暑中お見舞いを申し上げます(2019年8月)

病院長 篭島 充

 厳しい暑さが続く毎日。熱中症の方も多数搬送されています。こまめな水分補給と適切な冷房を心がけて、どうかお健やかにこの夏を乗り切っていただきたきたく存じます。

 さて、前回お伝えした「働き方改革」のことについて、続きです。寝る間を惜しみ、当直の翌日も普通に仕事、土日もなく、呼び出されれば深夜でも病院に駆けつける。医師をはじめとする、医療従事者の献身的な労働にこの国の医療は支えられてきました。

 ここに労働管理のメスが入り、長すぎる時間外労働時間を制限しようというのが働き方改革です。医療者とて労働者の一人であり、その健康を守るためには重要なことです。

 一方で、労働時間が減れば、診療に充てる時間が制限されます。その結果医療の提供体制に影響が出ることを懸念する声もあります。時間外の救急医療ができなくなる、職員を大幅に増やす必要があるが、人手は足らず、人件費も払いきれない、果たして地域の医療を守ってゆけるのか、というものです。

 とはいえ、国策としてこれが進められる以上、限られた診療時間を効率的に使うために、新しい診療の形を考えなければならないのは、確かなようです。そのため、今後みなさまにも、病院の利用の仕方についてご協力をいただかなければならない場面も増えるでしょう。

 たとえば入院患者さんについて、手術などの急性期病院の治療が一段落したら、その後のリハビリや、自宅に戻るための準備は回復期の病院に移って行っていただくことをお願いすることが多くなります。あるいは夜間の受診について、電話で病状をお聞きした結果緊急性が低いと判断されたときは、翌朝の診療時間に受診することをご相談させていただくことも増えるかと思います。

 また、外来通院中の患者さまについては、病状が安定して、数カ月に一度の受診になったら、ご自宅近くのかかりつけ医に通院していただくことをお願いすることが増えます。(病状が変化した場合はもちろん病院で対応いたします)。最近は「地域連携パス」といって、平素はかかりつけ医のもとに通院し、薬はそこで出してもらう、あわせて半年に一回程度病院の専門医を受診するという、いわば二人の主治医を持つような受診の方法が広まりつつあります。上越地域でも、このような方法が導入されてゆくでしょうし、主治医から患者さまにそのような提案をする場面が多くなると考えられます。

 以上述べたようなことは、国が進める地域医療構想の考え方にも一致することです。高齢化や社会保障費の急増を背景に、医療、保健、福祉、介護を一体として効率よく使う仕組みを地域ごとに考えなさい、というものが、その考え方です。みなさんにずっと上越総合病院に通院してほしいのはやまやまなのですが、手術や専門的な検査など、病院にしかできない役割を果たして、かつそれを働き方改革と両立させるためには、以上お伝えしたようなことを地域のみなさまにもご理解をいただく必要がございます。なにとぞご賢察とご協力をいただきますよう、お願いを申し上げます。

 先日九州から訪ねてきた人がいて、高田公園を案内しました。一面の蓮の花に、感嘆の声をあげていました。


 蓮の花が咲いている
 泥の中にさえこれだけの
 きよらかな色と形が
 ひそんでいるというように

 蓮の花が咲いている
 問われた問いは大きくて
 問われつつ 身をゆだね
 咲くほかないというように


 高野喜久雄さんという詩人の作品の一節です。高田三郎さんという方が曲をつけて、「この地上」という混声合唱組曲の中の一曲として聞くことができます。高野さんは若い頃、高田農業高校で数学の教鞭を執っていたそうで、上越に縁のある方です。

 私たち人間の毎日は、それこそ泥にまみれたものかもしれません。しかしそこには、ひたすらに生きている輝きがあります。医療を取り巻く環境はどんどん厳しく、難しくなっています。そんな中でも、医療者はみな、その輝きを守るという問いに応えるために一所懸命でいたい。そう願っています。今後とも上越総合病院にご支援、ご指導を賜りますよう、何卒よろしくお願いを申し上げます。

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