病院長挨拶
病院長挨拶(2020年1月)
病院長 篭島 充
あけましておめでとうございます。日頃は上越総合病院に多くのご理解とご支援を賜り、この場を借りて心から御礼を申し上げます。
昨年は猛暑が稲の実りを妨げ、秋には台風で河川の増水に肝を冷やしました。今年こそ、穏やかで幸多い毎日であることを祈ります。
今年の干支は庚子(かのえね)。庚という文字には実りの後の転身、子という文字には生命のスタートと、それに続く発展や繁殖という意味が込められているそうです。今までの形をリセットして、新たなスタートを切るといったところでしょうか。
では、医療の分野はどうでしょう。昨年はあまり愉快な話題はありませんでした。機能見直しや再編が必要な病院のリストが公表され、上越地域でも多くの施設がその対象とされました。当院はそこに含まれませんでしたが、今の医療体制のままでいいのか、よく考えなさいという国からのメッセージは、年々強くなっています。これからの医療はどうなるのだろう、上越は大丈夫だろうかとご心配の方も多いことでしょう。
地域医療構想(過剰な病床を整理し、医療機関の役割分担を明確にして、効率のよい医療の提供をはかる。人口減社会と増え続ける医療費を見据えたもの)、医師の働き方改革(過労死を招きかねない過酷な労働条件を改善するため、病院医師の労働時間を制限するもの)、医療従事者の都市部への偏在(医師育成制度が変わったことや、人・物・お金が都市部へ集中する影響で、地方には医師をはじめ、医療従事者が集まらなくなってきています)。わたしたちを悩ませる、大きな問題です。
これらの政策が計画どおりに実行されれば、たとえばこんなことが起こりえます。―入院期間がさらに短縮される。入院後急性期を過ぎたら回復期や慢性期の病院に移るなど、病状に応じた医療機関の移動がさらに促進される。病院の外来は新患や具合が悪くなった患者さん中心になり、病状の落ち着いた方はかかりつけ医を受診する。普段はかかりつけ医を受診し、半年に一回程度病院でチェックを受けるような受診の仕方が普及してゆくかもしれません。医師の労働時間が制限されるため、病院の診療が縮小せざるを得なくなり、救急医療などに大きな支障が出る-。加えて来年は診療報酬の改定があり、患者さんの自己負担が増すことは確実なようです。
これらはみなさまにとって、望ましいことばかりではないでしょう。とはいえ、この国の力、この国の制度の中で医療をしてゆくほかはないことも事実です。
これからの医療には、従来の常識が通用しなくなってゆきます。変化に対応できない地域や病院は、容赦なくふるい落とされてゆきます。つらい時代ですが、スピード感を持って、智慧を出してゆかなければなりません。医療を提供する側の病院も、それを受ける側の地域のみなさまも、力を合わせて新たな医療のあり方を創ってゆく時期が来たのです。
上越総合病院は、地域の医療を守ってゆくために、日々努力を重ねています。診療の質を高め、患者さまにご満足いただけるように、BSC(バランスド・スコアカード)という業務改善の取り組みを行っています。安心・安全な医療に配慮しつつ、業務手順を見直して、待ち時間の短縮や作業の効率化を進めています。国が進める看護師特定行為研修制度の研修施設となり(県内では新潟大学に次ぐものです)、看護の質向上に力を入れています。多職種にわたる医療スタッフの教育や研修に力を注ぎ、人材育成・確保に努めています。今年は常勤医師がさらに増える予定です。
このように考えれば、これから大変なことも多いけれども、可能性もあると思います。誰もが健やかに暮らせる地域づくりには、しっかりした医療が欠かせません。それには地域のみなさま全員の力が必要です。今後とも上越総合病院にお力添えを賜りますよう、何卒よろしくお願いを申し上げます。