新潟県厚生農業協同組合連合会 上越総合病院

病院長挨拶

病院長挨拶(2022年8月)

病院長 篭島 充

 いつも上越総合病院に多大なご理解、ご支援をいただきまして、ありがとうございます。

 先の見えないウクライナの戦禍、それに端を発する物価高など、やりきれない話題の多いこの夏。コロナも未曾有の規模の第7波が襲い、依然収束が見えません。猛暑も重なり、容易ではない毎日ですが、お変わりございませんでしょうか。

 さて、本年度は診療報酬改定の年です。我が国では医療保険制度に基づく保険診療が実施されていますが、2年に1度、各種医療サービスや薬の価格変更、診療規則の見直しなどが行われます。今年はその年度に当たり、さまざまな改訂が行われました。

 その内容ですが、近年の改訂で示されてきた考え方が一層強調され、地域における医療機関の役割分担を強力に推し進めるものになっています。これらは繰り返しこの欄でご紹介してきた、地域医療構想や働き方改革の内容とも一致します。次回改訂までの2年間に、上越でもさまざまな変化が起きそうです。

 国が改革を進める背景には、今日の社会情勢があります。少子高齢化で、患者さんは減らないのに、働き手は減っています。税収の減少も予想され、国の財政事情が一層悪化することが予想されます。一方で医療はどんどん高度化、細分化し、求められる水準は高まる一方です。

 このような流れの中で、都市部の大病院への医療の集中が急速に進んでいます。逆に地方では、医療従事者の確保や、診療の質の維持が困難になっています。都市部との競争に負けずに上越地域の医療を維持してゆくためには、従来のやり方では難しい状況です。

 さらに、2024年度からの医師の働き方改革では、病院で働く医師の時間外労働が制限されます。休日や夜間に診療できる時間が限られ、時間外に働いたときは、日中の勤務時間に代わりの休みを与えなければなりません。これまでの医療は医師の時間外労働に頼ってきた面がありますが、それが制限されるので、病院で行ってきた業務の一部を、地域の他の医療機関に委ねざるを得なくなります。

 そのようなわけで、間もなくみなさまに、次のようなお願いをするようになります。

 第一に、県立中央病院や当院のような病院は、急病や怪我から間もなくの時期(急性期)の医療、具体的には病院でしかできないような手術や検査などを主に担当することになります。急性期を過ぎて、リハビリや退院待ちの時期を迎えたら、回復期や慢性期を担当する病院に転院をお願いするようになります。

 第二に、外来患者さまのうち病状がおおむね安定している方については、ご自宅近くのかかりつけのクリニックや、急性期以外の病院、診療所などへの通院をお願いすることが増えます。ふだんはかかりつけ医のもとで診察や投薬を受けていただき、急性期病院には、半年に一回程度経過観察のために受診する、あるいは病状に変化があったときや急変時に受診をしていただくのが主体となります。また、新患として当院を受診する場合も、できるだけかかりつけ医にまず相談して、紹介状をご持参のうえ、受診していただくことをお勧めするようになるでしょう。

 第三に、入院患者さまの病状説明は、急変の場合を除き、原則として平日の診療時間内にお願いをいたします。

 第四に、現在医師が行っている処置を、看護師や薬剤師など、医師以外の職種の職員が行う場面が増えます。昨年の法改正でそれが可能となり、すでにそのための研修会などが全国で開催され、準備が始まっています。

 自分の家の近くに大病院があって、いつでも、どんな医療でもそこで受けることができるのなら、それが一番いいでしょう。われわれ病院の職員も、みなさまのそのような思いに応えたいと思っております。

 しかしながら、すでに述べたような事情で、国はそのような方向に改革を押し進めています。さらに、人も時間も限られてゆく中で、病院は都市部との競争を強いられています。このような状況では、残念ながらそれは難しいのです。

 上越地域に末永く持続可能な医療体制を築くためには、地域のみなさまのお力添えが欠かせません。ぜひご理解、ご協力を賜りますよう、何卒よろしくお願いを申し上げます。

夕涼み 花火線香の匂い哉

正岡子規

 誰でも小さい頃、線香花火で遊んだことがあるでしょう。花火の周りには、友達や家族、親戚の姿が、きっとあったことでしょう。目を閉じれば、そのときの弾んだ声や、すいかの味、心のふれあいまで蘇ってくるようです。

 たしかに夏は郷愁を誘う季節ですが、当時はよかったという気持ちになるのは、それだけが理由ではないかもしれません。物事がもう少しゆったりと進み、世の中には希望があり、人はみな、やさしかったような気がするのは、わたしだけでしょうか。

 世の中は変わったけれど、医療は変わることなく、そんな風景を大切にしたいものです。思うに任せないことも多いのですが、みなさまの安心と幸福のために、一所懸命取り組んでゆきたい、そのように思っています。

 今後とも上越総合病院を、何卒、何卒よろしくお願い申し上げます。

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