2016年01月21日
第43回 考えて、学ぶ
一月もはや下旬。この間年が明けたと思ったのに、まさに光陰矢のごとしです。弾丸寒波で太平洋側までも雪模様、そんな中小生は胃腸炎で体調を崩し、健康のありがたみを痛感した昨今であります。
新しい年、みなさまいかがお過ごしでしょうか。医学部六年生諸君は、目の前の国家試験に向けて、文字通り寝る間も惜しい毎日をお過ごしでしょう。どうか体調には気をつけて、晴れてマッチング先の研修を始めることができるよう、お祈りしております。研修二年生は後期研修先を決め、研修終了に向けて仕上げをしている頃でしょうか。新しいステージへ大いなる一歩を踏み出すために、後悔のない毎日を過ごしてほしいものです。
さて、試験とか修了とか、一つの節目を迎えるたびに、「もっと勉強しておけばよかった」と思うのは人の常、ですよね。たしかに誘惑に負けて飲みに行ってしまい、やるべき勉強を後回しにしたこともあるでしょう。おしゃべりに夢中になって、スケジュールを反故にしたこともあるでしょう。でも、研修の大部分で、みなさんは一所懸命に学んできたのではないでしょうか。それなのになぜ、自分が満足できるほどの知識が残らないのでしょう
いろいろな意見があります。知識だけが医者の能力ではない。それはそのとおりです。手技をこなせるスキルも、患者さんに共感できる真心も、医者として欠くことのできないコンピテンシーに違いありません。しかしながら、たとえば読み書きそろばんと言われるように、知識はないよりはあった方が良いでしょう。ましては、専門職としての医師として今後自立してゆくためには、知っていることが一つでも多い方がよいでしょうし、知らないことを新しく学ぶ習慣を身に着けておくことは、とても大切だと言えるでしょう。
では、どうしたらそのような知識や習慣が身につくのでしょうか。人によって多様なスタイルがあると思いますが、はっきりしているのは、丸暗記は長続きしないということでしょう。できれば病態生理にそって、考えながら頭の中に整理することです。○○だからこうなる、という筋道をつけるということです。そうやって収納しておけば、この筋道の上の何か話題になったとき、道の上にあるすべての情報を想起できるようになります。道と道を結ぶ横道ができれば、さらに知識のネットワークができて、一を聞いて十を知る、あるいは一を聞いて十思い出すということができるようになります。
この学習には時間がかかります。考えながら進まなければならないからです。加えて脳に学習した内容を収納するとき、その刻印を確かなものにするために、教科書を黙読するだけではなく、音読したり、自分なりにノートにまとめたりして、指先、声、耳の五感を使う必要が生じます。これも時間を要します。
とはいえ、手間をかけて耕しておくと、記憶が長続きするだけではなく、新しいことも覚えやすくなります。一見効率のよい表面的な学び方では、知識が消え去るのも速いのです。学生さんや研修医諸君には、手間がかかっても、考えながら学んでほしいと思います。そんな習慣を身に着けることができれば、研修の成功は、半ば約束されたようなものでしょう。
さあ、よいことのたくさんある一年になりますように。