2016年02月29日
九州大学大学院の先生方が、彼らが発見した小惑星に「王貞治」という名前を申請して認められたというニュースが伝わってきました。世界のホームラン王もびっくり、といったところでしょうか。「これを機会に野球ファンが天文学に興味を持ってくれたら嬉しい」という王さんのコメントもスマートでした。 星といえば、サン=テクジュペリの「星の王子さま」の一節に、こんなことが書いてあります。大人たちは何もわかっちゃいない。本当は象を飲み込んだウワバミの絵なのに、誰に見せても帽子だとしか答えないんだから。人はなかなかその固定観念を変えることができない、自分がそうだと信じていることほど、実は真実とはまったくかけ離れていることがある、ということのたとえ話でしょうか。 このことは、自分自身にもあてはまるのではないでしょうか。 たとえば服装の好みです。自分が選ぶといつも同じような柄や色合いのものになってしまいがちです。その方が慣れていて安心ですから。でも、それは自分の可能性に目をつむっていると言えるかもしれません。いつもシックな着こなしで固めている彼女、カジュアルなものをまとったら、別人かと思うほど似合ってる。勇気を出して髪型を変えたらびっくりするほど好評で、何だか自分に自信がついてきた。そんな経験はありませんか。 わたしたちは、本当の自分を知りません。自分のふるまいが患者さんや医療チームのほかのスタッフの目にはどのように映っているか、まったく気がついていないのです。鏡に映る自分は、正面からの、少し気取った姿だけでしかありません。自分の後姿は誰にも見ることができないし、まして自分の言動が、それを受け取った人の心にどんなさざなみを作りだしたかは、全く知る由もありません。 しかしながら、周囲の人から見た自分のイメージは、そのような、自分では見ることのできない要素により多く規定されているでしょう。自分の知っている自分と人が把握している自分とは、まったく違うものなのです。 専門職としての医療者になるということは、周囲に映る自分が医療者に求められる望ましいふるまいをしているということです。おのれのイメージが周囲から見たイメージと一致していて、自然にそのようなふるまいができれば理想的だと言えるでしょう。 みなさんの研修は、そんな自分探しの毎日だと言えでしょう。では、医療のプロフェッショナルとしての姿に自分を近づけるにはどうしたらよいのでしょうか。 その方法の一つが、省察(振り返り)です。当院では一診療科のローテーションが終わるたびに、研修振り返り評価をしています。みなさんに自己目線でおのれのパフォーマンスを振り返ってもらうことはもちろんですが、看護師長さんなど他職種の指導者にも参加してもらって、外からの視点も加えた評価をしてもらっています(360度評価といいます)。 360度評価は、特に厳しめの評価をうけた場合など、みなさんにとっては心に痛いこともあるようです。その気持ちはわかります。とはいえ、意に沿わないことがあっても、ひとまず耳を貸していただくことが大切です。誰でも初めてジーンズを履いたときは、ずいぶん窮屈だと感じたのではないでしょうか。我慢して着ているうちに、それが似合う自分に変わってきたはずです。 変わることは、進歩です。さなぎは羽化するまでの間、葉っぱの裏にぶら下がって、陽射しや風雨に耐えなければなりません。でも、それを苦もなく受け入れているように見えます。その先に美しい蝶として舞う日々が待っているのですから。 お知らせです。7月23日、24日の両日、上越市内で臨床研修指導医講習会を開催します。研修医の参加も大歓迎です。興味のある方は、当院臨床研修担当 rinsho@joetsu-hp.jp までご連絡をどうぞ。
2016年02月08日
1月9日、10日と2日間に亘ってゴータム・デシュパンデ先生による教育回診があり、私は1日目に症例提示をさせていただきました。 英語でのプレゼンテーションは初めてで、準備も発表も戸惑うことばかりでした。咄嗟の質問に上手く答えられないことなど反省点もありましたが、ゴータム先生が私たちに分かりやすいような表現を使ってくださったり、指導医の先生方に助言をいただいたりして、楽しみながら症例検討することができました。自分では思いつかなかった疾患や考え方に気付かされ、とても勉強になりました。 2日目は糸魚川総合病院での症例検討でしたが、前日にプレゼンターを経験したせいか今までの教育回診よりも積極的に話し合いに参加し、発言できたのではないかと思います。 この2日間、大変貴重な経験をさせていただきました。ゴータム先生、そしてご指導いただいた循環器内科や総合診療科の先生方、本当にありがとうございました。
2016年01月28日
野尻先生の論文で掲載された医学誌は、「臨床医薬 第31巻 第12号 別冊 平成27年12月発行」です。 Rabeprazole を含む三剤療法の Helicobacter pylori 一次除菌に対するパック製剤の効果に関する検討
2016年01月21日
一月もはや下旬。この間年が明けたと思ったのに、まさに光陰矢のごとしです。弾丸寒波で太平洋側までも雪模様、そんな中小生は胃腸炎で体調を崩し、健康のありがたみを痛感した昨今であります。 新しい年、みなさまいかがお過ごしでしょうか。医学部六年生諸君は、目の前の国家試験に向けて、文字通り寝る間も惜しい毎日をお過ごしでしょう。どうか体調には気をつけて、晴れてマッチング先の研修を始めることができるよう、お祈りしております。研修二年生は後期研修先を決め、研修終了に向けて仕上げをしている頃でしょうか。新しいステージへ大いなる一歩を踏み出すために、後悔のない毎日を過ごしてほしいものです。 さて、試験とか修了とか、一つの節目を迎えるたびに、「もっと勉強しておけばよかった」と思うのは人の常、ですよね。たしかに誘惑に負けて飲みに行ってしまい、やるべき勉強を後回しにしたこともあるでしょう。おしゃべりに夢中になって、スケジュールを反故にしたこともあるでしょう。でも、研修の大部分で、みなさんは一所懸命に学んできたのではないでしょうか。それなのになぜ、自分が満足できるほどの知識が残らないのでしょう いろいろな意見があります。知識だけが医者の能力ではない。それはそのとおりです。手技をこなせるスキルも、患者さんに共感できる真心も、医者として欠くことのできないコンピテンシーに違いありません。しかしながら、たとえば読み書きそろばんと言われるように、知識はないよりはあった方が良いでしょう。ましては、専門職としての医師として今後自立してゆくためには、知っていることが一つでも多い方がよいでしょうし、知らないことを新しく学ぶ習慣を身に着けておくことは、とても大切だと言えるでしょう。 では、どうしたらそのような知識や習慣が身につくのでしょうか。人によって多様なスタイルがあると思いますが、はっきりしているのは、丸暗記は長続きしないということでしょう。できれば病態生理にそって、考えながら頭の中に整理することです。○○だからこうなる、という筋道をつけるということです。そうやって収納しておけば、この筋道の上の何か話題になったとき、道の上にあるすべての情報を想起できるようになります。道と道を結ぶ横道ができれば、さらに知識のネットワークができて、一を聞いて十を知る、あるいは一を聞いて十思い出すということができるようになります。 この学習には時間がかかります。考えながら進まなければならないからです。加えて脳に学習した内容を収納するとき、その刻印を確かなものにするために、教科書を黙読するだけではなく、音読したり、自分なりにノートにまとめたりして、指先、声、耳の五感を使う必要が生じます。これも時間を要します。 とはいえ、手間をかけて耕しておくと、記憶が長続きするだけではなく、新しいことも覚えやすくなります。一見効率のよい表面的な学び方では、知識が消え去るのも速いのです。学生さんや研修医諸君には、手間がかかっても、考えながら学んでほしいと思います。そんな習慣を身に着けることができれば、研修の成功は、半ば約束されたようなものでしょう。 さあ、よいことのたくさんある一年になりますように。
2015年12月22日
松本先生は豊富な知識と様々な診断方法をお持ちで、それを私たちにおしみなく教えてくださいました。そして豊富な豊富なボケと鋭いツッコミで、会場は常に明るく話しやすい雰囲気の症例検討会となりました。 松本先生はコミュニケーション能力にも優れておられ、またご自身で「人が好き」とおっしゃっているように、幾多ものコミュニティーに属してたくさんの人と密に関わりながら総合診療を極めていらっしゃいます。こういう学会があったんだ、こんな勉強会がヤバかったんだという楽しいお話に、自分も引き込まれていきました。 1日目は自分のとっておきの心残りの症例を提示させていただいたのですが、松本先生は交流のある他の総合診療の先生方にまで打診してくださり真摯に向き合ってくださいました。自分でも、やっとその症例に自分なりの決着がついた気がします。 飲み会の場では自分の進路相談もさせていただきたくさんの候補病院また勉強サイト・本を教えてもらいました。自分の知らないことの多さにも愕然とさせられ、非常に勉強意欲をかきたてられました。現在それらをかたっぱしから勉強中です。 松本先生本当にありがとうございました。是非またいらしてください。
2015年12月04日
当院では毎年一回、イノベーションレクチャーと銘打った講演会を開いています。ここでいうイノベーションとは、新しい発想を持ち、自分や自分の所属する集団の意識や行動を変え、新しいステージに上ってゆくようなイメージを持っています。同じ環境の中にいたのでは、新鮮なアイディアは生まれません。医療とは異なる分野の方を講師に招くことが大切です。今年は十一月の末に、国語教育がご専門の、玉川大学大学院、松本修教授を招いて、「言葉の力-読みの交流でつながる-」というタイトルでお話ししていただきました。 思うに、私たちはあまりに話をしなくなっています。スマホやネットを見ることには夢中になるのに、人に自分の気持ちを伝えるとか、ほかの人の考えを聞くということをほとんどしない。君たち若い人たちの様子を見ていると、むしろそれを煩わしく感じているような気さえします。患者さんに対しても、医療チームの仲間にも、話を聞いたりしたりすることは医師として欠かせないことなのに。 松本先生は、子供むけに書かれた詩の一節を用いて、何について語っているのか、参加者にディスカッションを促し、その結果を発表することを求めました。最初はみんな静かです。自分が試されているような気がするし、間違ったことを言ったら笑われそうだし。でも、そんな心配は杞憂でした。もともと一つの正解しかない問いかけではありませんし、ディスカッションしやすいように、松本先生がグループの人数を調整してくれていましたから。次第に会場は賑やかになり、自分が考えてもいなかったような意見が出ると、なるほどと感心する声も聞こえていました。 もっと頭を柔らかくしなくては。-そんなふうに感じた参加者が多かったかもしれません。しかし、松本先生のねらいは別のところにあったような気がします。 自分ひとりで考えていたのでは、限られたアイディアしか生まれません。一途になればなるほど、自由な思考が停止してしまいます。だから言葉も出てきません。 しかし、ひとたび自分の考えを言葉にすれば、たとえそれが拙かったり、「何も思いつきません」といったものだったとしても、近くにいる人がそれを聞いてくれます。その相手は、あなたの意見に対する感想を口にしてくれるでしょう。あるいはあなたの発言が、相手に自分の意見を述べるための勇気を与えるかもしれません。相手の考えを聞けば、そこにあなたのものとは違う視点が見つかります。あなたは今までとは違った方向から、新しい方法でものを見ることができるようになります。言葉のキャッチボールは、単に気持ちを伝え合うだけではなく、お互いの脳に新しい扉を開き、それぞれの可能性を高める大切な手段のひとつなのです。それに気がつくことこそ、今回の講演の主眼だったのでしょう。 今でも「ムンテラ」という言葉が残っていますが、かつてのドイツでは、患者さんと語り合うことを治療に役立てようとする、Mund Therapieとう考え方がありました。最近ではnarrative medicineと呼ぶのかもしれません。医師と患者の間にも、語りを通じて感じること、考えることがたくさんあります。その人間らしい営みが、病を癒し、みなさんを患者さんの痛みや悲しみがわかる医師にしてくれるのだと思います。あるいは同僚、指導医、他職種のスタッフとの会話。すべてがみなさんを仲間の気持ちがわかり、自分に求められている役割を理解し、言われなくてもそれを実践できる医師にしてくれるのです。 みんな、もっと話をしましょう。ときにはスマホをしまったままの一日があってもいいではありませんか。
2015年11月17日
11月13日に北海道から渡辺祐介先生をお呼びし、市中病院では全国初となる電気メス・エネルギーデバイスのハンズオンセミナーが開催されました。 普段使っている電気メスのこと、こんなに知らなかったんだ!と目からウロコでした。 カナダ留学のお話も聞けて、また県外からいらした外科の先生方との繋がりもでき、trauma surgery や general surgeon に興味がある私にとって大変幸運な1日でした。
2015年10月15日
今回の病院祭では恒例となった劇に加え、新しく作られた研修医ブースを通して地域の皆様と直接交流できて、上越をより身近に感じられるようになりました。 またこういう機会があれば積極的に参加していきたいです! 1年目研修医
2015年10月13日
実りの秋。十月ともなれば、一年生は研修の四分の一が過ぎ、そろそろいろんな悩みや希望が出てくる頃です。一方二年生は残すところあと半年、経験目標の達成状況が気になる時期ですね。あわせて今後の進路についても、悩み多き日々を送っていることでしょう。 さて、十月は病院祭の季節でもあります。地域のみなさまを広く病院にお招きして、職員と交流していただく大切なひとときです。今年もさまざまな企画が目白押しでした。職場紹介パネル、医学講演、がんぎっこライブ、クラシックコンサート、保倉川太鼓、マジックステージ、バルーンパフォーマンス、似顔絵、そして職員によるよさこい踊り、合唱、喫茶&軽食サービスなど。新米祭りでにぎわう、お隣のあるるん畑ともタイアップして、とても楽しい一日でした。 さて、病院祭といえば、わがこじょんのびたちのプチ演劇です。今年で三回目になりますが、すっかり恒例になりました。毎年どんな内容になるか、はらはらドキドキしながら楽しみにしているのですが、今年はセーラームーンでしたねー! 一年生は女子が多いので、ぴったりでした。ただ一人の男性であるS君も、美脚を惜しげもなく披露してくれました。一か月も前から毎日練習していただけあって(!)、みんなとても上手でしたよ。見ている方はもちろんだけれど、踊っている君たちがとても楽しそうで、なんだか幸せな気持ちになりました。 さて、その病院祭ですが、今年は新しく臨床研修医のブースを作りました。卒後臨床研修評価機構は、臨床研修病院の望ましい姿として、患者さんを含む地域のみなさんに、研修医のふるまいを評価してもらうことを挙げています。そのコンセプトに沿って、今回設けたブースでは、来場の地域住民のみなさんにアンケートを行ってみました。 アンケートで知りたかったことが三つあります。第一に、地域のみなさんが臨床研修制度や研修医についてどの程度知っているかということ。第二に、君たちのふるまいがどのような印象を持たれているかということ。第三に、君たちがどのように期待をされているかです。 第一の点について。研修医が医師免許を持っていること、指導医の指導のもとで研修を行っていることについては、およそ三分の一の方が知らなかったと答えています。研修期間や必修項目が定められている、臨床研修病院として認められる要件があること、研修制度は質の高い医師を養成して、国民の利益に資することを目標としていることなどについては、ほぼ半数の方が知らなかったと回答しました。どうやらもっとPRの機会を増やす必要がありそうです。 第二の点について。実際に君たちの診療を受けたことがあると答えた方はごく少数でしたが、診察を受けた印象として、何度も病室を訪れてくれでよかった、ていねいに問診してくれたといった、好意的な意見があった反面、入院を断られそうになった(最終的には指導医の判断で入院したのですが)という意見もありました。患者さんは指導医に対して敷居の高さを感じていますから、そばにいて話を聞いてくれる研修医に親しみを感じるにかもしれません。君たちの強みがどこにあるのか、ヒントになる話です。 第三の、君たちに期待する点については、誠実さ・思いやり、コミュニケーションが最も多く、医学的技術、医学的知識がそれに続きます。当院が研修病院であることについては、大部分が大変良いという意見でした。研修医や臨床研修制度の将来については、圧倒的多数が期待すると応えてくれていました。 この結果を、君たちはどう思うでしょうか。地域のみなさんは、自分を診療しているのが研修医であるとわかっていても、必ずや地域や国民のために働いてくれるだろうと期待して、痛みもリスクも甘んじて受け入れ、みずからの体を預けてくれているのです。そんな無償の愛に、君たちの成長は支えられているのです。 どうか、そのことを決して忘れないでください。
2015年10月13日
今年の病院祭では、初めて研修医ブースを作りました。地域のみなさまにAEDの講習を行いました。小学生から高齢の方まで熱心に参加してくださいました。 また、同時に研修医に対するアンケート調査も実施しました。「研修医ってそもそもよくわからない」といわれる方もちらほら…研修医は、医師免許を取得していて初期研修期間は2年間以上、その間必須の研修すべき診療科があり、経験すべき病名や 手技があること、日々指導医の監督下で安全安心な医療を提供していることなどを説明させていただきました。 臨床研修医を少しでもわかっていただける良い機会となったと思います。アンケートで住民のみなさまからいただいたメッセージをいくつかご紹介します。 Aさん:家族が入院したとき、再三にわたり病室を訪れ病状を見に来てくれた。 Bさん:救急外来で入院を希望したが断られた。その後、主治医(指導医)から入院させてもらった。 Cさん:とても親切で話しやすかった。 Dさん:たくさん勉強して新潟(上越)に就職してほしい。 Eさん:上越総合病院でしか経験できないこともあると思うからこの病院が臨床研修病院であることに賛成だ。 Fさん:より良い医師をどんどん世の中に送り込んでほしい。 ご協力いただきました方々に感謝いたします。