2024年01月22日
こじょんのび便り!2023年第10号
AM6:00 目覚ましのベルは鳴っていない。
朝日に染まるハイウェイ越しの妙高山に目をやり、紅茶と食パンの準備を始める。部屋の空気はピンと張りつめている。テレビでは箱根駅伝の総集編が流れており、アナウンサーの熱を帯びた実況が寝ぼけた頭の中でぐるぐる回っている。
AM7:00 布団にしがみついた1匹のナマケモノを人間に戻し、洗い物と洗濯物を片付ける。
「あれ、救急車のサイレン聞こえる?」「聞こえへんよ、気のせいやろ」
朝勝手に目が覚めてしまうだけでなく、ついに聞こえない音まで聞こえるようになったかと年月の残酷さを感じつつ、もう1匹の支度を待つ。
「7:40になったら家出ようっと♪」「…今44分だけど」
なぜかいつもせわしなく家を出る。
こんな当たり前の日常も残りわずかになってきたのだな、、そんなことを考え始めた、研修医2年目の学士殿です。
戦国時代の軍神・上杉謙信のお膝元、ここ上越の地での初期研修も2年を終えようとしています。戦国最強と謳われた謙信は生涯71戦で2敗しかしなかったようですが(諸説あり)、私の初期研修を振り返ると数々の苦い敗戦を経て現在があると感じています。
勢いよく電話でコンサルトするも、要領を得ず玉砕した春。
患者さんのルートが全然取れず、手技の未熟さに焦り始めた夏。
学会発表で質疑応答がしどろもどろになり、知識と経験の浅さに絶望した秋。
院内急変にいち早く駆けつけたはいいものの、うまく立ち回れず無力さに落ち込んだ冬。
思い返せば数えきれないほどの失敗があり、そのたび成長させて頂いた2年間でした。
しかし研修医が多くの失敗を主体的に経験できるというのは、ある意味では当院の素晴らしい研修環境の表れなのではないかとも思います。それを可能にしているのが、研修医にも様々なことをやらしてくれ、温かく見守り、何かあれば親身に相談に乗ってくださる上級医の先生方。未熟な私にも気さくに教えてくださり、協力してくださるコメディカルの方々。至らないことや慣れないことがあっても、優しく協力してくださる患者さん。
いろいろな周囲の方々のおかげで今の自分があるのだと実感しています。本当に感謝しかありません。
ところで小生、来年は年男になります(何度目かは秘密♪)。Google先生によれば、巳年生まれは目標を決めたら努力を惜しまず最後までやりぬく粘り強さを持っているらしいです。
春からは専門医として働き始めますが、地を這う蛇がごとく(?) 泥臭く、忍耐強く、またこれまでお世話になった方々への感謝を忘れずに、一歩一歩前進してきたいと思います。