新潟県厚生農業協同組合連合会 上越総合病院

初期臨床研修

2012年05月07日

4月も末日

4月も末日、世は黄金連休の真っただ中である。小生はと言えば、朝から日直である。昨日はeレジフェアで東京であった。今さらながら、指導医の毎日は過酷である。普通に休める人たちがいささか羨ましい。

一緒に仕事をするのは2年目に入った研修医のP嬢である。連休中研修医は休んでもかまわないことにしてあるが、勉強したいからと名乗り出てきた。休みのたび二日酔いでいたかつての自分を思い出すと、頭が下がる。

そんなわけで、気合が入る。高齢女性、下腹部痛である。数日前にも受診し、CTが撮ってある。腹痛の原因になるような異常はない。問診しても要領を得ない。

さあ、どうする。P嬢にささやく。ACLS-EPコースで学んだことを思い出そう。BLSサーベイとACLSサーベイをする。会話が出来ているから大丈夫だ。ラインをとって、モニターをとって、必要なら酸素を流して安全網を敷こう。それからバイタルを見よう。P嬢が言う。徐脈ですね。

もう一度情報を集める。昨年受診したとき、腎機能障害があった。CTに尿路結石が映っている。水腎や尿路感染がかぶって、腎不全が進行して高カリ、ってストーリーもあるかもしれないね。などど話しながら検査をオーダーする。心電図をとる。

何だかわからず検査をオーダーするのと、病態に関する思案の先のオーダーとでは、月とスッポンである。

はたして、9mEq/Lに達しようかという高カリウム血症である。心電図はQRS幅が広がり始めている。もうこちらのものである。カルシウムを打って、透析担当医に連絡して、メイロン、ラシックスを投与する。

腹痛という切り口だけでは、この患者をVFにしていたかもしれない。徐脈に気がついたところから、正解への道が開ける。まずは五感を総動員して注意深く身体所見をとることである。見つめなければ見えていても見えない。知らなければ見えていても気がつかない。基本はいつもシンプルである。

夕方、ICUに立ち寄る。患者さんは元気である。一方P嬢はぐったりとしているが、満足げである。新しい経験が彼女を高みに押し上げた。熱意は無駄になることがない。よかった。

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