2013年04月01日
卒業おめでとう
プロ野球が開幕し、東京では桜が散り始めるとのこと。当地では梅が咲いたばかりであるが、春本番も間近であろう。
さて、年度末である。往く人との別れを惜しみつつ、新天地での活躍を心に祈る日々が続く。この春大学を卒業したみなさんは、国家試験を終え、四月からの研修開始にむけて、引っ越しなどの準備に忙しい毎日をお過ごしのことでしょう。
さて、わが研修医もまた、ある者は巣立ってゆき、ある者は二年生に進級する。彼らの机がきれいになったさまや、荷物をまとめて研修医室から上級医の部屋に引っ越す姿を見かける。指導医としては感無量、ジーンとくるものがある。 P子。二年間で本当によく成長した。知識やスキルはまだまだかもしれない。しかし向上心や負けん気は誰にも劣るまい。朝早くから夜遅くまで仕事や勉強に打ち込む姿は、感動的ですらあった。その姿勢がある限り、いくらでも成長してゆけるはずだ。
S男。叱られることばかりだったと思っているかもしれない。しかし、一番指導医に可愛がられていたのは君だ。その笑顔を患者さんの前でも惜しみなく見せることだ。そうすれば、相手が心を開いてくれる。その先に臨床医としての成功の道が開ける。
W男。おっとりしていて、本気になったところを見たことがない。あるいはそれは、器の大きさゆえかもしれない。一度自分を締めているタガを外して、とことんまで突き抜けてみるとよい。その先の景色を目に焼き付けておくことだ。
Y子。よく最後までがんばった。曇り空のような日々が続いたこともあったかもしれない。だが、今は晴れやかな気持ちでいるだろう。人生、捨てたものではない。いつも希望を持ち続けること。そうすれば、毎日が青空になるはずだ。
Q太郎。激動の一年間だったかもしれない。仲間に厳しく言われたこと、指導医に説教されたこと。しかしそれは誰にもあることだ。雑草は踏まれて強くなる。気付いていないかもしれないが、強い根が出来つつある気配がある。これからの一年間はジャンプの時間になるだろう。
R子。いろんな症例を見た。恐ろしい思いもたくさんしたことだろう。だが、怖がることはない。患者さんは命をかけて、君に教えてくれているのだ。どんなことでも、瞼を大きく開いてしっかり見ておこう。そうすれば、行動せずにはいられなくなるはずだ。
先輩たちが作り始めたこの病院の臨床研修の伝統を、より確かなものにしてくれたのは君たちだ。そのことに心から感謝している。そして君たちの姿を、後に続く仲間が見ている。途中から仲間になったS子も、そして四月からやってくる、六人の新人たちも。君たちの全力の毎日が、これからもきっと彼らのいいお手本になるに違いない。
僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る (高村光太郎「道程」より)
卒業おめでとう。
進級おめでとう。
そして、本当にありがとう。