2014年04月01日
門出に思う
雪が溶け、梅が咲き始め、今年も卒業の季節です。当院からも、二年間の初期研修を終えた仲間が巣立ってゆきます。
Q太郎は少しやんちゃで、自分のペースを崩さない青年でした。学生時代に病院見学に来たとき、彼の趣味に合わせてYou tubeで格闘技の動画を見たものでした(笑)。周囲に器用に合わせてゆくタイプではないので、ローテーションのたびに苦労をしたことでしょう。あまり話をせず、一人で考えている時間が多くなった時期もあり、心配をしました。でも、それは杞憂だったようで、自分なりにフィットする術を見つけて、外科系をローテートし始めると堂々とした姿になりました。進路を決めるのにいろいろと迷ったようだけれど、それだけに、自分が選んだ道をまっすぐに進んでほしいと願っています。
P子はとても素直でまじめなレディーでした。彼女の心の中にはいつも、自分の力量に対する不安があったように思います。でも、それが彼女の背中を押すパワーになりました。労を惜しまず、不安を向上心に変えて、どこへでも飛びこんで行きました。その結果、さなぎが繭を破るような成長を遂げました。救急PHSを持たされておろおろしていた日直が夢のようです(笑)。努力して手にした羽根で、大きく飛び立ってほしいものです。
先日の研修修了式では、二人が職員に向けてメッセージを残してくれました。皆、君たちの一所懸命な姿を思い出しながら、うなずいたり、眼がしらを押さえたりしながら聞いていました。語るも涙、聞くも涙。二人が声を揃えて語ってくれた感謝の言葉を、皆が心に刻んだことでしょう。
小生の心に残ったのは、「これからも研修医をよろしくお願いします」と頭を下げた君たちの姿、忘れてはならない姿です。
君たちは、自分の医者としてのスタートをわれわれに賭けている。一方、指導する側にとっては、教育は忍耐を要する、手間のかかる作業です。誰にでも手を抜いたり、妥協したくなるときがあります。わが身を振り返っても、反省すべきことがたくさんあります。でも、それではいけない。君たちの真剣な願いを叶えるように、一途にサポートし続けなければならない。当院の誰もが、心の底からそう思い、行動したくなるような、そんな研修風土を築いてゆきたい。それこそが君たちが残してくれた、プログラム責任者の宿題だと思っています。
4月になれば、後輩たちがやってきます。君たちにもそうしたように、彼らの指導に忙しい毎日が待っていることでしょう。先輩になる現在の一年生たちは、一年間の進歩を実感し、後輩を助けたいと思うことでしょう。
言うまでもなく、そうやって後進を指導するのは、君たちが願っているように、研修医を大切に育みたいからです。でも、それだけではありません。
天塩にかけた君たちが去ってゆくのは、実にさびしい。君たちの人生の節目であることも、新しい門出であることも、祝福しなければならないことも、よくわかっています。でも、君たちに「お世話になりました」と挨拶されたくはない。逃げ回りたいくらいです。そこにいた君たちがいなくなる、そのさびしさを埋めるには、新入生の指導でもしていなければ、やってられない。これもまた、理由のひとつに違いありません。
おめでとう。そしてありがとう。幸運を祈ります。