新潟県厚生農業協同組合連合会 上越総合病院

初期臨床研修

2015年03月04日

プチ教育回診

慌ただしさに身をまかせ、お正月もバレンタンデーも過ぎ去って、はや三月になった。年をとると、光陰ジェット機のごとしである。

さて、前回のコラム以降の、研修医のためのイベントを振り返っておこう。

  • 1月25日、糸魚川総合病院に出向いて、「診断戦略」の志水太郎先生のレクチャーに参加。これまでにはなかった切り口で診断に迫る、新鮮な内容であった。

  • 2月1日、徳洲会奄美ブロック総合診療研修センターの平島修先生をお招きして、「上越糸魚川フィジカルクラブ」を開催。男子諸君はみんな裸になって、いい汗かいたねえ(笑)。

  • 2月24日、亀田総合病院集中治療部の笹野幹雄先生の教育回診。今回はありがちな診断エラーをテーマにした症例を提示した。グループに分かれて活発なディスカッションができた。素晴らしいことだ。

  • 1月31日、NPO法人日本医療教育プログラム推進機構(JAMEP)主催の基本的臨床能力評価試験を受験。当院の研修プログラムを評価する手段の一つとして、昨年から受験料病院負担で研修医諸君に受験してもらっている。小生も試験監督をしながら、一緒に問題を解いてみる。結構難しい。先日採点結果が届き、当院基幹型二年生の平均点は、試験に参加した全国の研修病院のうち、何と第四位であった!
    望外の快挙である。まあ、問題の当たり外れもあるので、あまり喜ぶのもよくない。とはいえ、昨年は全体の中ごろだったことを思えば、大きな進歩である。

さて、イベントばかりが研修ではない。日々の積み重ねこそが基本である。半年ほど前から、彼らがERで経験した症例を取り上げて、イベントに招いているゲスト指導医にならって、上越総合病院版プチ教育回診を始めた。持ち回りで症例を準備し、プレゼンをしてもらう。今は小生が司会役で質問を引き出したり、ディスカッションをコーディネートしたりしているが、いずれこの役回りも後期研修医や二年生にやってもらおうと思っている。ともあれ、数をこなすうちに彼らのプレゼンの要領が良くなり、ツボを心得た意見が増え、正しい診断ができるようになってきた。継続は力なりである。加えて、取り上げた症例の問題点を「意識障害」とか「胸痛」とかのコンセプトに集約すれば、レポートを書くときの参考になる。良いことばかりである。今後も継続して、当院臨床研修の目玉にしてゆきたいものである。

3月は卒業の季節だ。今年は6人の基幹型二年生が初期研修を修了し、それぞれの後期研修に巣立ってゆく。4月からは入れ替わって6人の基幹型と1人の協力型の、ピッカピカの新人がやってくる。3月20日は修了式である。昨年は涙、涙だったが、今年の卒業生はどんなメッセージをわれわれに残してくれるだろう。後輩たちは、どんな気持ちでバトンを受け継いでくれるだろう。そしてわれわれ指導医・指導者たちは、彼らの足跡をこの病院のよき伝統に高めてゆかなければならない。考えなければならないことがたくさんあって、じょんのびしている時間がないのである(笑)。ともあれ、卒業生についてのメッセージは次回をお楽しみに。

最近面白かった本。トマ・ピケティ「21世紀の資本」-富が一部の人に集中し、経済格差が拡大していることを詳細なデータで示している。経済学書であるが、世界的ベストセラーである。医療の現場にいると、較差拡大の結果か、日常の生活に苦しんでいる人たちが急に増えてきたことを実感する。その背景にある資本主義の問題と、それをコントロールする民主主義への希望が描かれている。ちょっと勇気をもらった次第である。

ではまた、次回。

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