新潟県厚生農業協同組合連合会 上越総合病院

初期臨床研修

2015年05月25日

どうしてここに?

五月になれば、風が爽やか。田んぼが青空を映し、早苗がきらめく季節がやってきた。

われらがこじょんのびたちの様子はどうだろう。一年生はだいぶ白衣が似合ってきた。新しい環境にも慣れ、いよいよ研修も本格的である。その一方で、いろんなことを考え始める時期でもあろう。

「自分に知識が足りないことを、日々思い知らされています。」

「時間が足りなくて。朝から夜まで毎日忙しいです。早起き苦手なもんで。」

医療現場の大変さは、もちろん想像していたはずだ。だが、現実は思ったよりもはるかに複雑で、忙しい。ややもすると自分の能力に疑問符がつき、不安になる。

二年生はそろそろ研修終了後の進路のことを考えなければならない。初志貫徹で、道を決めた彼もいれば、迷っている彼女もいる。人と自分を比べてあれこれと考える。

どれも無理のない悩みである。だが、深刻になりすぎてもいけない。悩みは成長のための痛みでもある。自分ひとりで抱えないことが大切だ。友人や、信頼できる指導医など、話しやすい相手を探して気持ちを聞いてもらうとよい。話すだけで心が軽くなる。話しているうちに、自分の心の底を冷静に見つめることができるようになる。その頃には悩みも小さくなって、ひょっとしたらよい解決法も見つかるかもしれない。今年の一年生から、当院ではメンター制度を導入したが、これもきっと君たちを助けてくれるだろう。自分は一人ぼっちではなく、みんなが君たちを気にかけていることを忘れないでいてほしい。

先日レジナビに出かけた。都会の名だたる研修病院には学生が鈴なりだが、地方の病院は静かなものである。淋しいやら悔しいやらだが、そこは我慢。それにしても、君たちはどうやって研修病院や進路を決めるのだろう。

新潟県内の初期研修医の意識調査をしたアンケートがある。この春卒業した仲間が、研修中の本音を語ってくれている。

初期研修先を決めるうえで重視したポイントとしては、多い順に次のようである。研修プログラムが充実している、指導体制が充実している、施設・設備が充実している、症例が多い、先輩の評判が良い、地元に近い。

最も多い「研修プログラムの充実」でも、それを挙げた研修医の数は全体の半分以下で、他はおしなべて三割程度にすぎない。どうも決定的な理由が見当たらない。結局大切なのはイメージで、理由はそれを自分に納得させるために後づけしたものかもしれない。

うーん、と唸ってしまう。あたかも異性を好きになるときと似たプロセスで研修先が決まるのであれば、研修病院の努力にも限界があるからである。イケメンとノン・イケメンの差はなかなか埋まらない、でしょ(?)。

その一方で、研修を始めてから研修病院に望むこととして、彼らは次のようなことを挙げている(多い順)。

指導体制の充実、処遇・待遇の充実、外部(県外・海外)研修の充実、研修プログラムの充実。何だか研修病院を選んだ理由とかぶりますよね。プログラムや指導体制に期待して研修を始めたのに、それがいわば裏切られる結果になっているとも読める。

だとすれば、研修病院の努力のし甲斐もあるというものである。ノン・イケメンの病院であっても、親身の指導やプログラムの工夫でモテる可能性があるということだから。

さらにこんなデータもある。1/3の研修医は、大学卒業時に予定していた進路を、初期研修中に変更している。そうさせるだけの体験や出会いがあったということであろう。

やはり初期研修は、さまざなな可能性を秘めた、大切な時期に違いない。君たちに多くのチャンスを示し、たくさんのポジティブスイッチをオンにする。当院はそんな研修病院を目指しているのである。ともに励みましょう!

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