2012年05月21日
五月も半ばを過ぎた。肌寒かった今年の春であるが、もはや初夏の陽気である。 このコラムをスタートして三週間が経った。開始にあたり、二週間に一回は原稿を書くと公約をしたのだが、すでに約束違反である。断じて小生の怠慢ではない。忙しいのである。 循環器を専門にしているので昼夜を問わず診療があるし、副院長業務などという役職に就いているので、四六時中PHSは鳴るわ、書類を見ろと言われるわで、朝から晩まで休憩時間というものがない。ぶっちゃけた話、研修医の指導どころではないのである。 しかし、それを言っては身もふたもない。どの病院でも、良い指導医ほど忙しいのである。そんな中で何とかやりくりして研修医の役にたちたいと思っているのですよ。 というわけで、研修医も考えなければならない。指導医の限られた時間の中で、研修の成果が挙がるように工夫をするべきである。 しっかり勉強をしてほしい。当然のことである。その日にやったこと、失敗したこと、指導されたこと、感じたこと。その日のうちにこれらを片づけて、必要なことは調べておいてほしい。その過程で疑問点を整理し、指導医に聞きたいことをリストアップしておいてほしい。そうやってフレッシュな気持ちであしたを迎えるのである。 修行中の身にとってはあたりまえの態度だが、きちんとできている研修医は稀有である。机の上の散らかり具合がそれを証明している。 容易なことではないかもしれない。しかし君たちが独り立ちしたら、今の数倍の仕事をこなさなければならなくなるのだ。学生時代のチンタラと時間を無駄にする習慣を、きびきびとメリハリがあり、ビビッドな習慣に改めなければ早晩行き詰まってしまう。 一日は24時間であり、これは平等である。しかしながら、24時間もあると思う人と24時間しかないと考える人とでは、未来は大きく異なるのである。
2012年05月07日
4月も末日、世は黄金連休の真っただ中である。小生はと言えば、朝から日直である。昨日はeレジフェアで東京であった。今さらながら、指導医の毎日は過酷である。普通に休める人たちがいささか羨ましい。 一緒に仕事をするのは2年目に入った研修医のP嬢である。連休中研修医は休んでもかまわないことにしてあるが、勉強したいからと名乗り出てきた。休みのたび二日酔いでいたかつての自分を思い出すと、頭が下がる。 そんなわけで、気合が入る。高齢女性、下腹部痛である。数日前にも受診し、CTが撮ってある。腹痛の原因になるような異常はない。問診しても要領を得ない。 さあ、どうする。P嬢にささやく。ACLS-EPコースで学んだことを思い出そう。BLSサーベイとACLSサーベイをする。会話が出来ているから大丈夫だ。ラインをとって、モニターをとって、必要なら酸素を流して安全網を敷こう。それからバイタルを見よう。P嬢が言う。徐脈ですね。 もう一度情報を集める。昨年受診したとき、腎機能障害があった。CTに尿路結石が映っている。水腎や尿路感染がかぶって、腎不全が進行して高カリ、ってストーリーもあるかもしれないね。などど話しながら検査をオーダーする。心電図をとる。 何だかわからず検査をオーダーするのと、病態に関する思案の先のオーダーとでは、月とスッポンである。 はたして、9mEq/Lに達しようかという高カリウム血症である。心電図はQRS幅が広がり始めている。もうこちらのものである。カルシウムを打って、透析担当医に連絡して、メイロン、ラシックスを投与する。 腹痛という切り口だけでは、この患者をVFにしていたかもしれない。徐脈に気がついたところから、正解への道が開ける。まずは五感を総動員して注意深く身体所見をとることである。見つめなければ見えていても見えない。知らなければ見えていても気がつかない。基本はいつもシンプルである。 夕方、ICUに立ち寄る。患者さんは元気である。一方P嬢はぐったりとしているが、満足げである。新しい経験が彼女を高みに押し上げた。熱意は無駄になることがない。よかった。