新潟県厚生農業協同組合連合会 上越総合病院

脳神経外科

  • 概要・特色
  • 受付時間
  • 施術実績
  • 医師紹介

概要・特色

安全性と確実性とを両立し、早期の社会復帰ができる手術を心がけています。

当科の手術方針は、予定手術であれば無除毛または部分的除毛、必要十分な皮膚切開と開頭により行うことです。この方法は整容上も満足度が高く、社会復帰までの日数を短くできます。
また近年は脳神経モニタリング法(Neurosurgical monitoring)が進歩しました。当科では臨床検査技師の協力を得て、手術中に脳や脳神経を刺激して電気信号をモニタリングし、安全を確かめながら手術を行います(脳神経モニタリング手術)。これにより脳神経外科手術の安全性が向上しました。
そして脳動脈瘤の手術はより確実に瘤閉鎖が可能である、脳動脈瘤クリッピング術という開頭手術を主に行っています。動脈瘤頸部を脳動脈瘤クリップで閉鎖した後、ICGという色素を血管に注射して、大切な脳血管が流れていることを確認しています(ICG video-angiography)。
以上のように、当科では安全性と確実性とを両立し、早期の社会復帰ができる手術を心がけています。

対象疾患

大きく次のように分類されます。

①脳血管障害(脳卒中)
②脳腫瘍
③頭部外傷
④機能的脳外科疾患
⑤その他

診療内容

脳神経外科的疾患の症状

次のような症状のどれかがあれば、脳外科医にぜひご相談ください。

  • 頭痛
  • 意識障害
  • 高次脳機能の低下(人格や認知機能の低下)
  • 全身あるいは部分的なけいれん(てんかん)
  • 半身不随やシビレ感
  • 言葉の障害
  • 顔の痛み、顔のけいれん
  • 視覚や聴覚の問題
  • 頭部受傷後しばらくして(多くは1~2ヵ月後)認知障害や歩行障害、半身麻痺をきたした場合

特に、これらの症状が次第に悪くなるときは躊躇せず受診してください。

脳神経外科の治療はどのようなものですか?

①脳血管障害(脳卒中)

脳血管障害、いわゆる脳卒中には脳血管が詰まる脳梗塞と、脳血管から出血する脳出血および、くも膜下出血があります。脳神経外科では主にくも膜下出血と、脳出血を担当します。

くも膜下出血

脳動脈瘤の破裂が原因の大半です(約9割)。稀に脳動静脈奇形や、もやもや病などの血管病変からの出血が原因です。死亡率が約4割、後遺症率3割とされるため、非常に治療の難しい病気です(脳卒中データバンク)。今まで経験したことのないほどの突発的頭痛は、くも膜下出血の特徴です。この場合、首筋から後頭部の激痛のことがあり、一時的に気を失うことがあります。稀に風邪と間違われるような軽症のことがあります(警告出血)。遺伝病ではありませんが、3分の1くらいの患者さんに家庭内発生があります。
治療は開頭手術により破裂した脳動脈瘤を閉鎖する脳動脈瘤クリッピング術と、血管内カテーテル治療による、瘤内コイル塞栓術があります。当院ではより確実な瘤閉鎖のために、クリッピング術を主に行っています。使用例によりコイル塞栓術が適する場合もあり、適応を慎重に決定します。
くも膜下出血は発症後数日から数週間、脳が痙攣して細くなる脳血管れん縮を生じます。これには脳血管を拡張する薬や全身管理を行います。また発症後、1ヶ月前後で脳脊髄液の循環、吸収障害を生じて水頭症になる場合もあります。これに対してシリコンチューブとシャントバルブを体内に埋め込む脳室腹腔短絡術(脳室腹腔シャント術)を行います。

未破裂脳動脈瘤

MRI, MRAという精密検査の普及により、まだ出血していない脳動脈瘤が見つかるようになりました。大きな動脈瘤や形、大きさが変化してきた場合には出血リスクが高くなると言われます。それぞれの状態に合わせて、経過観察を行うか、クリッピング術やコイル塞栓術を行うかを、患者さんやご家族と話し合いながら決めていきます。

脳出血

最も重要な背景因子は、高血圧症であるとされます。高血圧が原因で動脈硬化が出血の原因とされます。出血の部位や大きさにより、主に救命を目的に開頭血腫除去術を行います。場合により脳内で使用できる神経内視鏡を用いて血腫除去を行うことがあります。脳出血の治療後は後遺症を負うことが多く、リハビリテーションによる機能回復訓練が必要となる場合があります。

脳梗塞

脳血管の閉塞により脳虚血を生じて、機能不全を起こす病態です。脳梗塞の進行スピードは極めて速く、発症後の数時間以内に治療を始めることが重要です。
4.5時間以内では、tPAという血栓溶解剤が適応となります。また同時に主管動脈閉塞を認めるときは、血栓回収療法というカテーテル治療が適応となります。
また脳梗塞が落ち着き頸動脈を精査すると、頸動脈分岐部が狭窄しプラークが見つかることがあります。頸動脈狭窄症といい、脳梗塞後の病変では70%以上の狭窄で治療適応があります。頸動脈を露出、切開して血栓内膜を切除する頸動脈切除術(CEA)。またはカテーテル治療による頸動脈ステント留置術(CAS)があります。
あるいは脳内で中大脳動脈が閉塞し、ダイアモックス負荷脳血流スキャンで血流低下が悪化するときがあります。これにはバイパス手術という脳血管再建術を行い治療します。

②脳腫瘍

良性腫瘍と悪性腫瘍に分類されます。良性腫瘍には髄膜腫、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫などがあります。特殊なものでは脳下垂体に生ずる脳下垂体腫瘍もあります。これらは手術による摘出が治療の中心です。しかし視神経近傍に生じた鞍結節部髄膜腫や聴神経から生じた神経鞘腫では、神経機能を温存しながら最大限に摘出を行います。最近では術中神経モニタリングが発達しましたので、モニタリングを行いながら神経温存を目指しています。
悪性腫瘍では、重要な脳機能部位に浸潤発達していることが多く、全摘出が難しいことがあります。手術により病理診断を確定して、手術後に放射線治療や化学療法を行うことが標準的です。

③頭部外傷

外傷性頭蓋内出血

頭部外傷の直後または数時間後から頭痛、嘔吐、四肢の脱力及びけいれん発作を生ずることがあります。これらは頭蓋内に出血や血腫を生じたための頭蓋内圧亢進症状の可能性があります。急性硬膜外血腫、性硬膜下血腫、脳挫傷による外傷性脳出血などの症例では、開頭血腫除去術を行います。また重症頭部外傷後にびまん性脳腫脹が生じ、頭蓋骨を開頭除去して脳圧を低下させる減圧開頭術を行うこともあります。

慢性硬膜下血腫

頭部外傷後、数週間から1.2ヶ月してから、頭痛や足元のふらつき、歩行困難が生ずることがあります。物忘れが起きる人もいます。これらの場合、CTスキャンを行うと脳表にゆっくりと溜まってきた血腫が見つかることがあります。これを慢性硬膜下血腫といい、局所麻酔による穿頭ドレナージ術により治療します。

④機能的脳外科疾患

三叉神経痛

片方の顔面、主に下あごや歯肉が冷たい水での洗顔や食事で噛んだ時に、刺されたように激痛に襲われることがあります。MRIによる画像診断を行うと、脳幹から分岐する三叉神経という神経または脳幹が、血管(小脳動脈まれに椎骨動脈)に圧迫されていることがあります。これは三叉神経痛という病気です。初めは薬(カルバマゼピン、プレガバリン)で治療します。薬で制御困難または副作用が生じるときは、手術で治療します。耳介の後方を小開頭し責任血管を見つけます。責任血管を圧迫部位から剥離して、斜台硬膜に接着して減圧を行います。これを微小血管減圧術と言い、高い治療効果が期待できます。

片側顔面けいれん

片方の顔面、まぶたや口角、頬が瞬間的にひきつり、痙攣する病気です。これは顔面神経が分岐する部位の脳幹が、小脳動脈や椎骨動脈の圧迫により生ずる病気です。これもクロナゼパムという薬が有効ですが、薬剤が切れると再び痙攣します。また、ボトックスという薬を、眼のまわりに注射する方法もあります。これらが有効でなければ手術で治療します(微小血管減圧術)。

⑤その他

特発性正常圧水頭症

人口の高齢化に伴い、認知機能低下症例が増えてきました。その代表はアルツハイマー病です。しかし中には認知機能低下だけでなく、歩行障害、排尿困難などが合併する症候群があります。CTスキャンでは脳室の拡大や脳溝の異常拡大(DESH所見、橋本ら、Cerebrospinal Fluid Res.2010)を認めます。これを特発性正常圧水頭症(iNPH)と言いますが、最近診断されることが増えてきました。これに対してシリコンチューブとシャントバルブを体内に埋め込む、脳室腹腔短絡術(脳室腹腔シャント術)を行い治療します(前出、くも膜下出血後の水頭症を参照)。

脳神経外科の手術は大変ですか?

たしかに自分が脳神経外科で手術を受けるとしたら、とても怖いのが正直な気持ちです。ですので、経験豊富かつ倫理的な脳神経外科医師を選ぶことが大切だと思います。
多くの脳神経外科手術では、必ずしも脳を切開したり切除したりするわけではありません。脳動脈瘤や良性の頭蓋底部脳腫瘍は脳の奥に位置していても、多くはくも膜という結合組織を切開することで、脳自体を切開せずに手術が可能です。一方、悪性脳腫瘍は脳内に浸潤していることが多く、ある程度脳を切開しないと病変に到達できません。

脳の病気を予防する秘訣はなんですか?

一般に脳神経外科では、手術後の患者さんの回復は良好です。しかし神経学的後遺症を伴うことがあります。脳卒中といわれる脳血管障害では、発症時の病変の場所と大きさで予後が決まるといっても過言ではありません。そのため脳卒中については予防が最も大切です。
現代は健康に関する情報があふれています。しかし全てを完全に管理することは困難です。皆さんに、ひとつだけ守っていただきたいことがあります。それは血圧を正常に保つことです。日本人は血圧が高めで特に出血性脳卒中が欧米よりも多いと報告されます。血圧の正常化が、脳卒中予防の最も重要な課題です。脳卒中を予防することで、安心した生活を送れるように心がけましょう。

受付時間・休診について

下記よりご確認ください。

施術実績

脳神経外科統計(2019年~2021年)

  2021 2020 2019
手術件数 83 83 101
脳腫瘍 20 6 12
 摘出術 10 6 9
 生検術(定位脳手術) 3 0 2
 経蝶形骨洞手術 7 - -
 その他 0 0 1
脳血管障害 19 27 38
 破裂動脈瘤 11 11 14
 未破裂動脈瘤 2 6 3
 脳動脈奇形 1 1 0
 頸動脈内膜剥離 1 0 0
 バイパス術 2 1 0
 脳出血(開頭血腫除去術) 2 8 14
 脳出血(定位脳手術) 0 0 1
 その他 0 0 6
外傷 28 19 18
 急性硬膜外血腫 1 0 0
 急性硬膜下血腫 4 1 1
 減圧開頭術 1 0 0
 慢性硬膜下血腫 22 18 16
 その他 0 0 1
水頭症 7 9 8
 シャント術 3 6 6
 内視鏡手術 2 1 0
 その他 2 2 2
機能的手術 3 4 3
 脳神経減圧術 3 4 3
その他 6 18 22
 その他 5 16 16
 頭蓋形成術 1 2 6

医師紹介

部長/荒川 泰明

専門領域
  • 脳神経外科全般
  • 脳卒中
  • 脳腫瘍
  • 頭部外傷
  • 正常圧水頭症
  • 顔面けいれん
  • 三叉神経痛など
資格・専門
  • 日本脳神経外科学会専門医
  • 日本脳卒中学会専門医、指導医
  • 第9回新潟医師臨床研修指導医講習会
  • 医学博士
所属学会
  • 日本脳神経学科学会
  • 日本脳卒中学会
  • 日本脳腫瘍の外科学会
  • 日本脳神経減圧術学会
  • 日本脳神経外科コングレス
略歴
  • 昭和63年 高田高校卒
  • 平成6年 金沢大学医学部卒、脳神経外科を専攻
  • 平成13年 脳外科学会専門医取得
  • 平成13年~平成18年 富山市民病院にて脳外科医長
  • 平成18年 上越総合病院
メッセージ 私は新潟県上越市の出身です。平成6年に金沢大学医学部を卒業後、新潟県、石川県、福井県、富山県の病院で研修し平成18年4月に上越総合病院に赴任しました。ともに赴任した江塚勇部長からは多くのことを学びました。なかでも脳外科手術をともに行い、多くの経験をしました。脳血管障害では脳動脈瘤クリッピング術や頸動脈内膜切除術(CEA),STA-MCAバイパス術。脳腫瘍では神経膠腫や頭蓋底部の髄膜腫の手術。また顔面けいれんや三叉神経痛といった微小血管減圧術の経験も豊富です。
最近では母校である金沢大学脳神経外科 中田光俊教授の支援を賜り、金沢大学から定期的に医師派遣を受けています。若い脳外科医や研修医の教育に力を注ぎ、一緒に安全な手術ができるように指導しています。
私の理想は地域医療を大切にすることです。故郷の地の利を生かし、人々の輪を重んじ、課題の多い上越の地域医療に貢献する時が参りました。上越総合病院 脳神経外科をこれからもご指導ご支援、よろしくお願いします。

部長/田村 哲郎

資格・専門
  • 脳神経外科学会専門医
  • 小児脳神経外科専門医
  • 内分泌学会専門医
  • リハビリテーション学会臨床認定医
略歴
  • 上越市出身
  • 弘前大学卒

医長/近藤 優美

略歴
  • 新潟県出身
  • 新潟大学卒

医師/亀山 茂樹(てんかん外来)

メッセージ てんかんの専門外来(毎週月曜日の午後)を担当しております。
私は、1995年以来西新潟中央病院(新潟市)でてんかん外科医として診療に従事し、1998年からてんかんセンター長、2008年から病院長としててんかん医療の向上に邁進してきました。2015年の退官後に、上越地区にてんかん専門医がいないことや長野や富山県からのアクセス改善のために、外来を開設しました。日本てんかん学会では理事として、てんかんガイドラインの作成に関与し、編集委員長としててんかんガイドブックを刊行しました。また特殊な手術法を開発し、14ヶ国を含む国内外の患者さんの手術も行っています。2014年に新潟県医療功労賞、2015年に日本てんかん学会功労賞、2017年に日本てんかん協会木村太郎記念賞を頂戴しました。てんかん専門医としての経験をこの地域の医療に役立てたいと考えております。
最近は高齢者のてんかん性健忘症候群が急増しています。てんかんは、専門的診断と早期の治療が大切ですので、てんかん専門外来をご利用いただきたいと思います。
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